「ラーメン」という食べ物は明治中期に横浜中華街の屋台が始まりというのが、これまでの定説であった。しかし、2000年に函館ラーメンを調査に行った時、意外なものを発見した。明治17年の函館新聞で、養和軒という洋食屋に陳南養というコックが入り、中華料理をメニューに加えたという広告があったのである。
よく見ると、その記事の中に「南京そば」15銭という文字が見られた。横浜中華街でも「南京そば」「支那そば」「中華そば」「ラーメン」と呼び名が時代によって変わっている。この15銭で売られていた「南京そば」がラーメンの原型であったとすれば、函館がラーメン発祥の地ということになる。
これを実証するために、中国領事館や華僑の組合などをあたったり、テレビや雑誌でこれについて知っている人を募集したりとか、あらゆる手は尽くした。現在のところ、それは実証できていない。
明治32年前後にオープンした、東京「維新号」、神戸「神海楼」、長崎「四海楼」、横浜「博雅亭」などよりも古くから、函館に中華料理が存在していたのは事実である。ということで、歴史と文化の香りのする函館ラーメンだが、当時、調査した結果では、函館ラーメンは日本一進化していないご当地ラーメンであった。
開港して、明治時代に中国から入ってきた麺文化は、塩味スープにストレート麺であった。それが日本人向けに醤油味となり、和風ダシを加え、麺を縮らせるという中国には、まずありえない日本独自の食品へと進化を遂げてラーメンとなったわけである。
しかし、函館のラーメンは中国から入ってきた麺文化が、あまり進化しないまま21世紀を迎えた。ラーメンといえば塩ラーメンが出てくる地方は函館くらいのものではないだろうか。
新横浜ラーメン博物館の期間限定店として、新しい函館塩ラーメンという企画で立ち上げた「マメさん」が博物館での営業を終え、函館に凱旋してオープンしたところが大盛況。その後、函館に新しいラーメン店が続々と増え、新しい力が台頭してきた。さらには、他のご当地ラーメンの函館進出もみられ、函館のラーメンは活性化している。
「函館塩ラーメンサミット」なるラーメンの祭りも開催されるようになり、今年の9月は2度目の開催となった。私もそのサミットに顔を出すとともに、テレビのロケで、函館の新しいラーメン店を9軒まわって食べ歩いた。「次郎長」、「ずん・どう」、「なんでや麺」、「しくぅはっく」、「らーめんの超人」、「洋食屋さんのラーメン」、「ら・むー」、「隆運丸」そして「マメさん」を2日間でまわった。
かつてはラーメンというと全て完食していた私だが、胃をこわしていたこともあって、全部は食べきれない状態で、ラーメン様には大変申し訳ないことをしてしまったけれども、数をまわったおかげで、函館のラーメンが大進化していることがわかった。以前からその傾向はつかんでいたが、これほど大きく変わっていようとは思っていなかった。
函館塩ラーメンという文化はきちんとベースにしながら、そのバリエーションは様々であった。少々濁らせている店もあれば、塩ラーメンだけで数種類の味を出している店もある。洋食の技術をいかした塩ラーメンもあれば、無化調で自然な食材の旨味を引き出した塩ラーメンもある。
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| 「マメ」さんのラーメン |
そして、函館ラーメン進化論の火付け役となった「マメさん」ではさらに麺が進化していた。もともと「マメさん」は函館岡田製麺の岡田社長がおこした店だが、機械だけで6500万円の費用をかけて「マメさん」用の製麺室を創ってしまった。
通常は小麦粉を攪拌(かくはん)するミキサーは針棒が同一方向に同じ速度で回転するが、新しく導入したミキサーは、高速で内回り、低速で外回りに回転する。これによって水回りがよくなり、練りがきめ細かになる。さらにはローラーが縦横同時に圧力がかかる仕組みになっており、グルテンが均一に出来るようになっている。
私と同行していたラーメンの鬼として有名な「支那そばや」の佐野実氏が、「負けた、俺もこれが欲しい」と言って、地団駄踏んで悔しがっていた程の高性能な最新機器なのだ。佐野氏が岡田社長に「ここまでお金をかけて、こんなものを作るなんて、あなたも相当な『ラーメン馬鹿』ですね」と言っていた言葉が印象に残る。
21世紀に突入してから函館のラーメン・シーンは、胸がすくくらい大きく進化した。ラーメンの番組が減ったとか、ラーメンバブルは崩壊したとか巷では言われているが、まだまだラーメンは進化し続けている。
これまで、首都圏がラーメン・シーンをリードしてきたが、これからは、地方の時代がやって来る。否、地方の時代がやって来ないと、グロスとしてのラーメンの成長はない。ぜひ、他の地方も函館のように進化して欲しいものである。
(武内 伸)
【新・函館ラーメン マメさん】
〒040-0053 函館市末広町12-3
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