ここ数年、いわゆるラーメン集合施設が急増している。1994年の新横浜ラーメン博物館開業による「フードテーマパーク」という提案は、その後カレー、寿司、餃子など、幾つかの異なる料理の集合施設にも波及した。しかし、同じ料理で複数の集合施設ができているのはラーメンのみである。
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| 新横浜ラーメン博物館 |
21世紀に入ってから東京駅、海老名、小樽に集合施設ができたかと思うと、2002年から2003年にかけては大宮、大阪、博多、熊本、名古屋にも登場。さらに2003年には仙台、浦和でのオープンも決定している。
確かにラーメンは、「嫌い」と言う人が滅多にいない人気料理ではあるが、それはカレーや餃子、寿司にも言えることだ。にも関わらず、なぜラーメンの集合施設だけがこれほどの勢いでオープンしているのであろうか。
一つは、ラーメンは「スープに浸った麺と具」という基本スタイルが同一であるにもかかわらず、そのジャンル分けの切り口が他の料理と比べものにならないほど多数存在するからだ。
一般的には醤油、味噌、塩、豚骨と言った「スープの基本味付け」がもっともわかりやすいが、それ以外にも麺の太い細い、固い柔らかい、縮れかストレートか。あるいはご当地として札幌、東京、博多、喜多方、旭川、和歌山、徳島……、スープが濁っているか透明か、油たっぷりのギトギトか少なめのさっぱりか。
人によって、「好きなラーメン」を決定するポイントはいくらでもある。また、そのポイントを分析し、自分の言葉で表現することは意外と難しくない。だからこそ、「自分の一番好きなラーメン」を探すのが楽しく、「あの店はどうだった、その店はこうだった」と他人とのラーメン談義に花が咲き、様々な個性的なラーメンを並べる集合施設の需要が絶えないのだ。
これが例えばカレーだと、スパイス調合による香りや刺激の好み、ストックから来るうまみの種類、使っている具材の煮込み具合や歯ごたえや味、ルーの粘度、ライスやナンの工夫など。いずれもラーメンに比べると、単独に分解しにくく、具体的な言葉でずばりとは表現しにくいものばかりである。
もう一つは、「ラーメンの思い出は店の味」と言えると思う。ある人の、各料理の原体験を探っていくと、カレーや餃子などは「オフクロが作ってくれた我が家の味」に行き着く人は多いだろう。
が、ラーメンの場合は、「近所のラーメン屋の味」「あのオヤジさんのラーメン」の方が多いのではないだろうか。家庭での(インスタント以外の)ラーメンが、ラーメンの原体験である人は少数派であろう。
「オフクロの味」「我が家の味」を超えるのは非常に難しい。料理としてレベルが上とか、間違いなくおいしいとか思っていても、どこかほっとする「我が家の味」との比較が、カレーや餃子にはあるように思う。逆にラーメンは、最初から店で食べるものであり、いろんな店を食べ比べるのがいわば、当然な感覚があるのではないか。
多くの人が「思い出のラーメン」を持っていながら、店ごとの味の個性はまさに百花繚乱。基本となるスタイルは共通しているのに、「好み」を語るポイントは満載で、味の談義についての話題もつきることがない。
また、インターネットの普及により、流通する情報の量と速度は数年前に比べてケタ外れに大きくなっている。少しくらい食べ歩いてもなかなか話題の店すべてを行き尽くすことはできない。そんな時、近所に「食べたいけど遠いあの久留米や尾道や函館のラーメン」や「テレビで見た事のあるあのお店」が何軒も入った集合施設があれば、ぜひ行ってみたくなると言うものだ。
人々の、個性的なラーメンに対する欲求がどれほどあるか、スーパーやコンビニに登場した、全国の個性店の名を冠したカップ麺、冷凍麺、袋麺が何百アイテムも存在することからも明らかだ。
上記のように、ラーメンは「集合体」とするにはおそらくもっとも適した料理であろう。それは、「新横浜ラーメン博物館」の開館以来の成功が証明している。バブル崩壊以降、使い道の見つからない土地の活用法として、各地で提案されるのにも納得がいく。
では、全国各地から探して来た人気店、個性店に出店して頑張ってもらえれば、それで間違いなくお客様が喜び、思惑通り繁盛するのだろうか……。
(北島 秀一)
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