今やラーメンのトッピングとして「半熟玉子」は当たり前になった。話題になるような新しい店で半熟玉子でない店の方が少ないくらいである。土佐コーチンなど、地鶏の卵を使う店も増え、その質は次第に向上している。ラーメンに煮玉子を入れるのは、かつては栄養を補う意味が強かったと思われるが、このところの創意工夫の積み重ねで、ラーメンの主役の一人に躍り出た感もある。
有名な中野「青葉」のギザギザにカットした玉子や、とろりとした食感の綱島「桃源」のもの、カットはしていないが銀座「勇」の二黄卵(ひとつの卵に黄身が二つはいっている)など、まさに百花繚乱である。最近出色の半熟玉子は、横須賀「塩や」の地玉子。これはもともとの卵の質が良いせいか、黄身が口の中に流れ出したときの味の濃厚さは抜群であった。
この半熟玉子の草分けと言われているのが、葛西「ちばき屋」である(他にもっと早い時期から半熟玉子を入れていた店があるという説もある)。「ちばき屋」の主人は、日本料理の板前として18年もの経歴を持ち、最後は銀座の高級日本料理店の料理長まで務めた人である。それが10年ほど前、ラーメンの世界に飛び込み、今ではゆるぎない人気店の地位を確立している。
和風の出汁の香るスープは、長年の修行から生み出された確かな腕前を感じさせる。そのラーメンに彩りを添えているのが半熟玉子なのだ。しかも単に卵を半熟に茹でるだけでなく、どうもスープに合うように下味をつけていると思われる。玉子が突出することなく、スープ、麺と調和している。実に心憎い工夫である。
偶然の符合か、それとも何らかの参考にしたのかはわからないが、「ちばき屋」主人のバックグラウンドである日本料理の世界には百年以上前から有名な半熟玉子が存在する。京都南禅寺近くの懐石料理店「瓢亭」の名物、瓢亭玉子である。半熟玉子を真ん中から2つに割ったもので、黄身で全く汚れていない切り口が見事である。この店の料理には四季を通じて八寸として必ず添えられる。
「瓢亭」の歴史は非常に古く、茶店として300年、料亭としても150年以上が経過している。谷崎潤一郎の「細雪」には、主人公の四姉妹がこの店で早めの夕食をとり、近くにある平安神宮の枝垂れ桜を見物に行く様子が描かれている。庭の中に数奇屋が点在する風情は素晴らしく、老舗が多い京都においても別格の店とされている。
瓢亭玉子は、幕末の頃には既に名物となっていたらしく、当時の文書に「近世の奇製なり」と書き残されている。幕末の頃は卵そのものが珍重されたようだが、いまだに生き残っているところを見ると、なかなか言いがたい魅力のある料理なのであろう。白と黄色のみの簡潔な美しさは、そこに茶の美を感じるという人がいるのも頷ける。
この瓢亭玉子について、瓢亭主人は「特に何の工夫もしていない、普通に茹でるだけ。黄身が真ん中にくるようにもしていない。ただ、新しい卵ではなく、数日経った卵を使うようにしている」と語っている。これは京都の人一流の謙遜と思われる。かなり前になるが、映画評論家の荻昌弘氏が自宅で瓢亭玉子を作ろうとして悪戦苦闘する様子をエッセイに書いていたことがある。一見簡単そうに見えるが、外からでは決してわからないコツがあるのではないだろうか。
実は瓢亭玉子を他の日本料理店で見かけることはほとんどない。有名すぎて遠慮があるせいかもしれないし、見た目以上に手間がかかるせいかもしれない。日本の料理文化を代表する店の名物に似た風貌をしたものが、100年以上を経てラーメンの世界でブレイクしたのは面白い現象である。良いものであれば貪欲に、かつ柔軟に取り入れるのがラーメンの魅力の一つであろう。
本家の瓢亭玉子は、時に塩辛いことがあり、ラーメンの半熟玉子がひょっとしたら質、量とも凌駕したのではないかと思っていた。しかし、久しぶりに訪れてみたところ、その出来ばえは見事なものであった。白身がこれ以上柔らかければ固体でなくなるぎりぎりでとどまっているのである。このような老舗でも、少しずつ改善を重ねているのかもしれない。ひるがえって、ラーメンの半熟玉子がどこまで進化していくのか楽しみではある。
その進化の一つの例が、8月にオープンする「汐留ラーメン」である。日本テレビの番組企画と連動しているため、色眼鏡で見る人がいるかもしれないが、スタッフは非常に真剣に取り組んでいる。先日、縁あって試食する機会があった。その半熟玉子は、説明されないと気づきにくいものの、銀座の和食店「食楽幸房」の店主だった竹若氏が技をこらした逸品である。大勢の客が押しかけたときの質の維持に一抹の不安が無いでもないが、是非実際に食べて確かめてみてほしい。
(河田 剛)
■ちばき屋 東京都江戸川区東葛西6-15-2 TEL: 03-3675-3300
11:30〜14:45、17:00〜23:45(日曜、祝日は〜22:45)第3火曜休
■汐留ラーメン 東京都港区東新橋1 日本テレビ新社屋内 TEL未定 8月1日開業
「超らーめんナビ」
株式会社エディアが運営する携帯電話向けのラーメン情報サイト。Ezweb(トップメニュー⇒生活情報を調べる⇒グルメ⇒超らーめんナビ)、J-SKY(J-skyメイン⇒グルメ・ショッピング⇒グルメ⇒超らーめんナビ)の公式サイト。位置情報付データで全国のラーメン情報を紹介するほか、掲示板ではラーメン好きの人のためのコミュニケーションで連日盛り上がりを見せている。
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■くだらない。
(平田:64歳:札幌パブリック警備保障)
■たまご一つでもそこまで奥が深いとは思いませんでした。一度食べてみたいとは思いますが、地方在住者には遠すぎる・・・。
(snark)
■今でこそ「一蘭」のおかげで1杯500円、600円と値段の高いラーメンの店が出てきましたが、ラーメンの存在として「安い食べ物」と言う認識がまだまだ濃いここ福岡の「長浜」「久留米」のラーメンでは基本的には卵は乗っていませんでした。乗っててせいぜい単なるゆで卵の薄いスライスが1〜2枚程度というものが多かったのです。近年になって煮卵や半熟卵をトッピングする店も出てきましたが、それは値段の高い店。確かに卵の存在は味に素晴しいインパクトを与えてくれますが、手の込んだ卵は原価を押し上げます。
実際卵はラーメンの必要要素なのか?
いいえ。あれはおまけですものね。
熊本や大分はラーメンの価格水準が福岡より高いので、卵の乗っている物も多いのですが、ラーメンの故郷福岡(ちなみにうどんも福岡が発祥)では、より美味い物を供給しようとすると必要以上に企業努力が必要な土地柄のようです。
しかしほとんどスープと麺の「基本」だけで勝負するのもこれも文化だと思います。四国のうどんもそんな感じだし、ちゃんぽん発祥の「四海楼」もあまりにも普通のちゃんぽんでびっくりしますし、そういった存在の仕方こそが「故郷」ならではの存在の仕方なのかもしれません。
ちなみに福岡では「ラーメン」とは豚骨の物をそう呼びます。それ以外は「しょうゆ味」「塩味」と形容詞がついた別の麺類として認識されています。
(豚骨大魔王:41歳:無職のラーメン星人)
■ラーメンの卵に対する考え方は地方によって違いますよね〜。関東では卵はトッピングの主役ですが北海道じゃのって無い方が多いみたいですね。
ちなみにとんこつ醤油にあじ玉やはん玉は良くあいますよね〜。でも塩にははん玉は不可です!絶対不可です!
とんこつに関しては 豚骨大魔王 に大賛成。ちなみにとんこつには海苔が良くあうと思うのはぼくだけでしょうか?
でも醤油と味噌にははん玉は相性がいいと思いますよ。でも個人的には完熟のあじ玉の方が好きですが・・・。
(シュウ:31歳:IT関係)