これからは、ますます「チームワーク」が大事になる
皆さんの中には、こう考える人がいるかもしれません。
「何ごとにもドライな外資系企業では、個人の成績こそが重要で、他人のことなどかまっていられないでしょう。『実力主義』、『成果主義』の世界では、自分のことで精一杯じゃないんですか?」。
「成果主義」について話をする機会があると、多くの人からこのような質問が寄せられます。多かれ少なかれ、このような理解が一般的なのではないかと思います。しかし、こうした理解は全くの見当違いです。
実際、既に「実力主義」や「成果主義」を導入している外資系企業においては、そのほとんどすべてで「チームワークは我が社の最重要行動規範である」と定めているくらいです。これを踏まえて私は、「実力主義」、「成果主義」の時代は、世間で思われているような「他人を蹴落とす世界」にはならないと考えています。
とは言え、成果主義の世界は、伝統的な日本企業に見られがちな「職場の和を尊ぶ」という世界ではありません。いわゆる「仲良しクラブ」ではないわけです。外資系企業がチームワークを尊ぶのは、「チームワークによる成果」が、「個々人のパフォーマンスの総和」を超える可能性があることを理解しているからにすぎません。
例えば、敏腕な営業担当者がいたとします。彼一人がどんなによい営業成績を上げても、それだけでは十分と言えません。その担当者がリーダーシップを発揮して、彼の所属する営業チーム全体の成績を押し上げれば、より高いパフォーマンスを期待できるからです。
チームとして、より高いパフォーマンスを得ることができれば、その営業担当者も、より高い評価を得られることになります。周囲にいる他の営業担当者への提案や支援は、彼自身の営業成績にはなかなか結びつかないかもしれません。しかし、彼の取った行動は十分に評価の対象となります。
成果主義の社会と言っても、「わたしにとってだけよいこと」を目指しているわけではありません。わたしにもチームにも、どちらにとってもよいことを目指しているのです。外資系企業は、こうしたやり方が、企業の利益を最大限に伸ばす方法であることを分かっているのです。
チームに貢献した社員をプラザホテルで頭取が接待
ここで、外資系企業が、どのくらいチームワークを重要視しているかという実例を挙げたいと思います。
私が勤めていたチェース・マンハッタン銀行には、さまざまな従業員報奨制度(Employee Recognition Award)がありました。その一つが「サービス・スター・アワード」です。これは「自分の所属する部門を超えて、個人ならびにチームとして卓越した業績を残した者を表彰する制度」のことです。簡単に言えば、最も優れたチームワークを示した部門の人たちを表彰する制度です。
選考に当っては、「サービス・スター・アワード」の受賞候補者となる「サービス・スター」を、世界5カ国にある本・支店からまず選び出します。日本なら東京にある在日支店から、もちろんニューヨークの本店からも、ロンドン支店やジャカルタ支店からも選びます。在日支店では、サービス・スターに手作りの表彰状と銀行のノベルティーを授与していた記憶があります。
次にサービス・スターの中から、世界の地域ごとに「シルバー・スター」を選びます。アジア地域では、地域の本拠地がある香港で審査を行い、優秀なチーム・個人を表彰します。さらに、シルバー・スターの中から特に選ばれた者だけが、こんどはニューヨーク本店で行われる表彰式に呼ばれます。彼らは栄えある「ゴールド・スター」たちです。
その表彰は半端なものではありません。ゴールド・スターに選ばれたスタッフは、なんと夫婦(恋人でもオーケー)でファーストクラスに乗ってニューヨークに出張します。
彼らが宿泊するのは、セントラルパークに臨む高級ホテル「プラザホテル」――あの「プラザ合意」が行われた場所です。滞在期間は1週間程度でしょうか。出張といっても特に仕事があるわけではなく、何度となく繰り返される頭取主催のディナー・パーティに出席したり、ハドソン・リバーからマンハッタン・パノラマビューを楽しめる豪華クルーズに参加したり、超豪華なイベントが彼らを待っているだけです。
ちなみに、私の部下も夫婦でニューヨークに出張しましたし、同僚だったジャカルタ支店の人事部長もニューヨークへの出張を満喫してきました。ちなみに彼は、ジャカルタのみならず、香港やその他の支店の仲間たちとのチームワークを業績として評価されたのです。
それにしても、すごい豪華さだと思いませんか。なぜファーストクラスで、しかも夫婦で招待をするのでしょうか。もちろん、ニューヨーク滞在中はすべて「あごあしつき」です。
チームワークを重視する経営トップからのメッセージ
それにはちゃんと理由があります。表彰式では、全世界から集まった「チームワーク・スピリットの権化(ごんげ)たち」に対して、経営トップである頭取自らが、一人ひとり握手して回ります。掛け声だけでなく、「経営トップはこんなにもチームワークを大切にしているんだよ」ということを行動で示すわけです。夫婦でというのは、「良い仕事をするにはパートナーの理解と協力が欠かせないことを十分理解していますよ」ということを表しています。
外資系企業がどれほどチームワークを重要視しているか、感じてもらえたでしょうか。うがった見方をすれば、チームスピリットを徹底して唱えていなければ、「自分さえよければいいのさ」という風潮がすぐに蔓延(まんえん)してしまうことの裏返しとも取れます。外資系企業の経営者たちは、そのことをよく分かっているからこそ、チームプレーの必要性を事あるごとに口にするのかもしれません。そして、そのことは、成果主義に基づいた人事制度を導入していく日本企業においても、とても大切になってくるコンセプトだと言えます。
(梅森 浩一=アップダウンサイジング ジャパン 代表)
■さすが!と唸らされる事例です。
成果主義において最も肝心な「『成果とは何か』を明確にすること」や、「それを(言葉ではなく)態度で示すこと」、それぞれの重要性を垣間見た思いです。また、「(そこまでしないと)『自分さえよければいいのさ』という風潮がすぐに蔓延(まんえん)してしまう」という指摘も的を射たものと思います。
国内大手企業の中でいち早く成果主義を導入したとされる富士通の凋落ぶりを見て、「だから成果主義はダメなんだ」という論調もあります。あれは成果主義のなんたるかを全く理解せずに導入したために発生した歪みであって、成果主義そのものの問題ではないと考えています。
ただ、(揚げ足を取る言い方になってしまいますが、)チェース・マンハッタン銀行の業績がどうなのかを不勉強で知らないものですから、画竜点睛を欠いている感もなきにしも。
(ZED:35歳:電子機器製造)
■このテーマに関してだけ言えば、梅森氏には賛成しかねる。
米国と韓国の電子通信企業に勤務した経験がある。一般的に、成果主義や年棒制を採る企業は、自分が持っている情報を決して人と共有しない「他人を蹴落とす世界」だし、上司に指示されないと他人と協働しない消極的な「チームワーク」である。さもないと生き残れない、極度の競争社会ゆえ。
経営者が声高に叫ぶのはそれができていないからであり、豪勢な褒美を与えるのはそれだけ稀(まれ)な、ありがたい従業員だからである。
(木暮正兼:50歳超:電子通信機器)
■仕事にはすべて目標設定があり、個人の目標からチームの目標、全体の目標(支店であれば支店の目標)がある。所属員全員がその目標をよく把握していること、成果のみならず過程を検証することも肝要です。
日本企業にはいまだ仲良しグループの意識が残っている。外資系企業の考え方がよく分かりました。
(宮地 豊男:62歳:大企業退職者)