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入門「近自然学」〜豊かさと環境の両立は可能だ
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新しいエネルギー利用(2)〜脱石油のシナリオ

2005/01/20

 前回は、新しいエネルギー利用に関する以下のテーマを取り上げた。
  • エネルギー利用の問題点
  • 間違いだらけの太陽エネルギー利用:市民の視点から見直す
  • 太陽エネルギーとの正しい付き合い方:形を変えない、遠くへ運ばない
 今回は、二つのテーマについて説明していく。
  • 脱石油のシナリオ
  • エネルギー貯蓄は多様に

4.脱石油のシナリオ

 「石油から太陽への転換」と表現した。しかし、石油など化石資源エネルギーの利用を完全にやめることはできないし、その必要性もない。

 地球上の植物などが二酸化炭素(CO2)を固定できる量は、人類が現在排出する量の約3分の2と言われる。つまり3分の1ほど多すぎるのだ。そこで、人類が目標とするべき、本当の二酸化炭素(CO2)削減量は33%である。ただし、太陽エネルギーを獲得するためのインフラ整備などにも石油エネルギーが必要となる。この分の余裕を見て、削減目標を50%としたい。

 石油(化石資源エネルギー)から太陽(再生エネルギー)への転換は、一気にはできない。ムリにやれば世界が大混乱に陥るだろう。しかし、先延ばしをし続けるなら、どこかで破綻してハードランディングとなる危険性が大きい。そこで、ソフトランディングのためのシナリオを考えてみる。

 脱石油は、ステップ・バイ・ステップで進める。

●第1段階(はじめに)
 地方の個人住宅や小規模工場などは、その周辺に存在するあらゆる再生エネルギーを獲得し、エネルギーの自立を目指す。この段階で様々な試行錯誤を繰り返し、大々的に始めるためのノウハウを蓄積したい。

太陽熱温水器
 ローコストで高効率を容易に実現できる。家のデザインの問題は残るにしても、できるだけ導入したい。

小型の風力・水力利用
 まず、高い効率を期待できる動力源として使う。発電はその次の利用法だ。

 現在の風力利用はプロペラ型(水平軸型)が一般的だ。だが、風速1m程度の微風でも動作し、風向きに影響されず、回転力を動力源として利用しやすい縦型(垂直軸型)に期待したい。風切り騒音もプロペラ型より少なく、野鳥やコウモリへの危険性が減る点も大きく評価できる。


図6 垂直軸型風車のイメージ図(グラフィック提供:シグナスミル)

バイオマスの熱利用
 森林が近くにあるなら、林業の復興と共に、廃材や間伐材による集中暖房(地域暖房)を検討したい。コンパクトな山村などでは、とても有利なエネルギー源となる。

 また、ゴミ焼却場の廃熱の有効利用もこれからの課題だろう。有効利用するためには、ゴミ焼却場を市街地内に造る必要性がある。最新の排ガスフィルター技術がそれを可能にした。現にスイス・チューリッヒ市では徹底的な排ガス対策をしたゴミ焼却場を市街地内に2基造り、ゴミ収集車の走行距離を短縮すると共に、排熱を周辺の公共施設や一般家庭に売って利用している。

間接熱利用
 風力・水力を動力としたヒートポンプによる間接熱利用も魅力的だ。

 太陽電池(ソラー・パネル)による発電は、現状では効率が10%程度である。製造・運転・保守・廃棄・リサイクルなどにかかる投入エネルギーをすべて加算すると、そのライフサイクルの間に得られるエネルギーの方が少なく、マイナス収支だと言われる。しかし、将来、これが逆転する可能性も大きいので、バックアップは続けたい。

 また、太陽電池は薄く、形も自在にでき、色の自由度も大きくなってきた。建物の屋根や外壁にうまく使えば、ランドシャフトを壊す問題をかなりの程度、回避できる。また、太陽光を使うその性格上、太陽熱温水器とのハイブリッド装置は、とても魅力的だ。これなら、光と熱を同時に利用できる。いずれにしても、エネルギー輸送をしない(地産地消)という原則を守りたい。

 都市部や高密度な工場地帯は、従来の化石資源エネルギーによる「集中システム」の改良にとどめる。原子力発電への新たな投資(研究も含めて)は控えるが、同時に早急な撤廃もしない。

 この他にも、資源としてのバイオマスの直接利用(国産材を建築、家具、道具、紙などに利用すること)と農林水産業(バイオマスを有効利用する産業)の見直しは重要な課題だ。バイオマスを資源として利用することは、間接的に石油エネルギーの消費量を減らす結果となる(詳しくは次章にゆずりたい)。

●第2段階(過渡期)
 第1段階で蓄積したノウハウを生かして、太陽エネルギーの利用を大きく広げていく。

 過渡期は、太陽エネルギーによる「分散システム」を、石油エネルギーを中心とする現在の「集中システム」に追加する形とする。そして、その割合を次第に増やす。条件の良い場所では主従を逆転させたい。

 太陽エネルギーの割合が増えるにしたがい、時間的および地域的な一部で、余剰が生じるだろう。これを集めて都市部や産業界へ回すシステムをつくる。この場合、現在の電力ネットの一部などを利用できる。

 工場・病院・学校・ホテルなどでは、必要とするエネルギー量の山谷が大きいので、燃料電池のような柔軟性のあるテクノロジーも導入する。その場合、電気ばかりではなく排熱も利用して、エネルギー利用効率80%を越える「コ・ジェネレーション・システム」を採用したい。逆に言うと、排熱の利用できない仕組みは、魅力が半減してしまうことになる。

 以上の進み具合を見ながら、原子力発電の継続、または廃止を判断する。

●第3段階(最終的に)
 最終的には、化石エネルギーによる「集中システム」、再生エネルギーによる「分散システム」、そして燃料電池などによる「中間システム」の三つのシステムを有機的に結合し、お互いに補い合う仕組みがよい。都市部や大工場は「集中システム」を主体に、田園部や地方は「分散システム」を主体にする。「中間システム」は、両者を補う形での導入となるだろう。

 この三つのシステムの割合は、あるところに次第に落ち着いていくだろう。その割合と落ち着く速さは、石油の残量と価格、太陽エネルギーを利用するための装置の価格などが決め手となるため、現状では予想が難しい。太陽エネルギーの割合を100%にすることが理想だが、到達目標を「2100年ごろで50%」としたい。

5.エネルギー貯蓄は多様に

 太陽エネルギーをはじめとする再生エネルギーは、「昼夜」、「強風時と無風時」など、得られるときと得られないときの差が大きく(川の流れ、バイオマス、間接熱は例外)、しかも使わなければ我々の手から逃げていってしまう(バイオマスは例外)。そのために、エネルギーを一時的に貯蓄できると都合がよい。

 ポータブル機器などには小型のエネルギー源が必要となる。これもエネルギー貯蓄の一種である。

 現在、エネルギー貯蓄は、バッテリーによるものが一般的だろう。しかし、これは問題が多い方式でもある。電気エネルギーを化学エネルギーとして貯蓄するものだからだ。そして使うときには、再び電気エネルギーに戻す。その度重なるエネルギー変換のために、効率は良くない。また、使わなければ自己放電してエネルギーを次第に失ってしまう。さらに、使用した後の廃棄物処理という大きな問題も抱える。

 太陽エネルギーの貯蓄は、獲得した元の形のまま行なうのが理想だ。

 太陽熱や地熱で水や石を暖めておき、それを後で利用することは一般的となってる。さらに、他のエネルギー貯蓄法も考えてみたい。

・メカ・バッテリー
 風力や水力は、機械的なエネルギー(運動、圧力、変形、高さなどが持つエネルギーのこと)であり、エネルギーを変換しないで機械的に貯蓄するのが合理的である。つまり、「弾み車を回す」、「空気を圧縮しておく」、「ゼンマイを巻き上げておく」、「重い石を持ち上げておく」などだ。

 これをメカ・バッテリーと言う。貯蓄するためのエネルギー変換がないために、ロスがなく大変効率が良い。使用時には、そこから効率良く機械的エネルギーを取り出して、ポンプを回したり機械を駆動することができる。

・バイオマス・バッテリー
 太陽エネルギーで成長する動植物(バイオマス/生物資源)は、人間が何もしなくても、そのままエネルギーが貯蓄されたバッテリーと言えよう。

・太陽電池
 著者は、大規模な太陽光発電には懐疑的である。だが、小型のエネルギー源(電源)として使用する場合の将来は明るいと見る。「太陽電池」と言われるように、小さな電源としての有効性はとても高い。

図7 小型機器への太陽電池の応用例
腕時計や電卓といった小型ポータブル機器における太陽電池の利用は、その長所を生かしたものと言える。左は電波制御のクォーツ時計で、機械式時計を愛する筆者も一目を置く。

・燃料電池
 ノートパソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラなど大きなパワーが必要な機器においては、超小型の燃料電池に期待したい。燃料となるメタノールなどを入れるカートリッジはリユース(再使用)が可能なので、従来のバッテリーに比べて使い捨て部品が劇的に減るのも長所だ。

 将来、燃料カートリッジが世界的に規格化されるなら、我々ユーザーにとって大変ありがたい話だ。この超小型太陽電池は、実は日本の得意分野なのであるが、世界的な競争が熾烈(しれつ)であることも事実だ。

図8 ノートパソコン用超小型燃料電池の例(写真提供:カシオ計算機)
現在一般的になっているリチウムイオン電池と比べて、半分の重量で約4倍の電池寿命が達成できると言われる。

 新しいエネルギー貯蓄法は、これから技術開発が必要な分野だ。従って、多くの企業や個人にとって、またとないビジネスチャンスとなるに違いない。特に、ローテクは大企業の不得意な分野であり、小規模な会社や個人にも成功のチャンスがある。


 太陽エネルギーの中で「近自然学」が最も重要視しているバイオマス(生物資源)については、章を改めてご説明したい。その際、若い、各分野の気鋭の論客に執筆をお願いする予定である。

(山脇 正俊=近自然学研究家)

=読者からのコメント=

■山脇さんが呈示されている今後のエネルギーのあり方を示す俯瞰図は、科学技術に過大な幻想を抱かず冷静に着実に歩を進めるという姿勢が感じられ、とても共感を覚えます。

 その上で自らを戒めたいと思うのは、現在の日本人の生活ぶりをそのまま肯定したままでは、いかに素晴らしい技術革新が今後もたらされたとしても、地球規模での解決には決してつながらないであろう、ということです。

 同時に進めるべきことは、これまで我々が、不可欠であるかのように思い込まされてきたエネルギーの使い方(暮らし方)を改めることです。

 かつては(便利=豊か)という図式が成り立ちました。しかし今では、(便利→貧しくなる)という実感の方が日増しに強くなってくるような気がしてなりません。 
(伊澄津左次:57歳:たねや)

■OMソーラー住宅はご存知でしょうか?

http://www.omsolar.co.jp/

 太陽熱分散利用の良い例かと思います。もう少し注目されても、といつも思うのですが。
(片倉:40歳:エンジニア)

■私も、「伊澄津左次」さんの「現在の日本人の生活ぶりをそのまま肯定したままでは、いかに素晴らしい技術革新が今後もたらされたとしても、地球規模での解決には決してつながらないであろう」という意見に賛成です。極端に言うと、手放しで「科学技術の進歩=良いこと」という書式こそ疑うべきではないかと…

 「技術の進歩」は人々に「幸せ」をもたらしたのではなく、「贅沢(ぜいたく)」を教えただけではないか…「便利になる」ことで、増えるはずの自由な時間が逆に減ってはいないか? 「豊かに暮らす」とは、どのような暮らしか? 使わなくてもいい「エネルギー」を使うことが、普通のことになっていないか? 自分にいつも問いかけています。そして、受け持っている学生たちにも、同様の問いかけをしています。

 エネルギー問題や環境問題の被害者は、同時に加害者でもあるのですよね?
(WOODS:44歳:国家1級自動車整備士)

■どちらかというと前回分のコメントに近くなります。エネルギーはなるべく形を変えないという意味で、昼間は太陽エネルギーを照明として利用することも必要だと思います。

 ところが、これが簡単なようで、意外とうまくできていないように思われます。

 住宅ならともかく、オフィスまで南側に窓を取ることにこだわる向きが多いようです。しかし、もっと北側に窓を取ることを重視すべきだと思います。

 南側の窓から差し込む直射日光は明るすぎるので、ブラインドやカーテンで遮へいしてしまい、かえって暗くなるので明かりを点けているケースが見られます。

 いっぽう北側の窓というと、イメージは暗そうですが、実際は外からの反射光がけっこう入ってくるので、柔らかな光が部屋の奥まで届き、照明としては適しています。外の景色も順光で見られるのできれいに見えるというメリットもあります。

 南側の方が冬は暖かくてよいと言いいます。しかし、オフィスではコンピュータなどから発生する熱で、冬でも空調は冷房になっていたりするのが実情です。

 それでは南側の壁面はどうしましょうか?

 効率がもっと良くなれば太陽電池をつければよいでしょう。それまでは植物でも這わせておきましょうか。オフィスビルのベランダでブドウを栽培するというのは無理ですか?
(我々は何処へ行くのか)

■メーカーでは、製造時のエネルギーを1.5年で回収できると言っています。運転・保守・廃棄・リサイクルを含めても、残りの18.5年以上のエネルギーが必要となるのでしょうか?

 また、発電効率10%というのは、最低レベルのスペックの製品で、最高レベルのものは16%近いものがあります。太陽電池のスペックを過少評価することになってしまうのではないでしょうか? 最高スペックのものでなくとも、その中間である数値を入れるべきではなかったではないでしょうか?

カネカのホームページ(メーカー)
http://www.a-sic.kaneka.co.jp/j/hybrid/1.html

京セラのページ(2004年08月03日)
世界最高効率15.7%の太陽電池モジュールを量産へ
http://www.kyocera.co.jp/news/2004/0801.html

本田技研のページ(2002年)
製造するためのエネルギーとコストを抑えることで、クリーンなエネルギーを身近に。Hondaの次世代型太陽電池
CIGS 太陽電池(非シリコン型)
http://www.honda.co.jp/tech/new-category/solar-cell/

 素人の私が見るところ、山脇さんの主張とメーカーの主張が食い違っているように思えるのですがどうでしょうか?
(gari:32歳)

■=筆者からのレス=
(伊澄津左次:57歳:たねや)さんのコメントに

「山脇さんが呈示されている今後のエネルギーのあり方を示す鳥瞰図は、科学技術に過大な幻想を抱かず冷静に着実に歩を進めるという姿勢が感じられ、とても共感を覚えます」。

 いつも、コメントありがとうございます。

 私自身、テクノロジーは好きなのですが、過剰な期待は危険だと思っています。

「その上で自らを戒めたいと思うのは、現在の日本人の生活ぶりをそのまま肯定したままでは、いかに素晴らしい技術革新が今後もたらされたとしても、地球規模での解決には決してつながらないであろう、ということです」。

 これには同感です。

「同時に進めるべきことは、これまで我々が、不可欠であるかのように思い込まされてきたエネルギーの使い方(暮らし方)を改めることです」。

 ライフスタイルの転換はエネルギー問題の解決には不可避だと思います。近自然学でもこれを大変重視しています。詳しくは「新しいビジネス」の章でお話する予定です。重要なのは、我々の生活を環境のためにいやいや制限するのではなく、もっと積極的に、物質的にも精神的にもより豊かな人生となるようにすることだと思います。そうでないとだれも実践しませんし。

「かつては(便利=豊か)という図式が成り立ちました。しかし今では、(便利→貧しくなる)という実感の方が日増しに強くなってくるような気がしてなりません」。

 わが意を得たりです。

 何でも電化製品がやってくれる生活は、決して我々に充足感を与えてくれません。またプラスティックを多用したチャチな安物が身辺に溢れる状態は、決して我々に豊かな気持をもたらしてくれません。むしろ、心の貧しさ以外の何物でもないと思います。それに、我々はもっと自分自身の頭・身体・手を使って仕事をしたいです。その方が、環境負荷が小さいばかりではなく、我々の生活の充足感・満足感・達成感なども、比べることができないほど高まるでしょう。

 ゆとりのある楽しく充実した人生こそが、結果として環境負荷の小さなものになると私は確信しています。

(スイスの山脇:54歳:入門「近自然学」筆者)


■=筆者からのレス=
(片倉:40歳:エンジニア)さんのコメントに

「OMソーラー住宅はご存知でしょうか?」。

 知りませんでした。お教えいただいたWebサイトを確認しました。なかなか興味深いものだと思います。

「太陽熱分散利用の良い例かと思います。もう少し注目されても、といつも思うのですが」。

 パッシブソラーシステムの良さをもっと認識しないといけませんね。もちろんそれだけではダメで、太陽光・太陽熱・風力・水力・バイオマス・地熱など、すべての再生エネルギーを利用したアクティブシステムも併用したいと思います。ある一つの優れたテクノロジーが問題のすべてを解決できる時代は過去のものだと思います。ありとあらゆる物を状況に応じて組み合わせる柔軟なシステムが必要だと思います。そのためには、優れた洞察力を持ったアドバイザーが必要で、たぶん新しい職種になるでしょう。

 それにいろいろな試みを実践している個人や企業がネットワークすることも重要です。かつてライバルと思われていた人たちや企業は、実は同志なんですね。

(スイスの山脇:54歳:入門「近自然学」筆者)


■=筆者からのレス=
(WOODS:44歳:国家1級自動車整備士)さんのコメントに

「極端に言うと、手放しで「科学技術の進歩=良いこと」という書式こそ疑うべきではないかと…」。

 私もその通りだと思います。

 ただし、注意しなければいけないのは、問題があるのは科学技術の進歩なのではなく、それを扱う我々人間の側だということです。どんなテクノロジーを進歩させ、それをどう利用するのかが、重要だと思うのです。

「『技術の進歩』は人々に『幸せ』をもたらしたのではなく、『贅沢(ぜいたく)』を教えただけではないか…『便利になる』ことで、増えるはずの自由な時間が逆に減ってはいないか? 『豊かに暮らす』とは、どのような暮らしか? 使わなくてもいい『エネルギー』を使うことが、普通のことになっていないか? 自分にいつも問いかけています」。

 とても大切なことだと思います。

 この問い掛けは、我々が絶えず繰り返さなければならないことかもしれません。そしてそれは、多分、個人個人で異なるはずです。そんな異なる幸せの形や人生を実現できる社会こそが、豊かな社会と言えるのではないでしょうか。

「そして、受け持っている学生たちにも、同様の問いかけをしています」。

 素晴らしいことだと思います。ぜひ、続けてください。

「エネルギー問題や環境問題の被害者は、同時に加害者でもあるのですよね?」

 全くその通りですよね。

 加害者が同時に被害者でもある、とも言えますが……。

(スイスの山脇:54歳:入門「近自然学」筆者)

■=筆者からのレス=
(我々は何処へ行くのか)さんのコメントに

「エネルギーはなるべく形を変えないという意味で、昼間は太陽エネルギーを照明として利用することも必要だと思います」。

 はい、私もそう思います。

「南側の窓から差し込む直射日光は明るすぎるので、ブラインドやカーテンで遮へいしてしまい、かえって暗くなるので明かりを点けているケースが見られます」。

 なるほど、そういうことがありましたか。

「いっぽう北側の窓というと、イメージは暗そうですが、実際は外からの反射光がけっこう入ってくるので、柔らかな光が部屋の奥まで届き、照明としては適しています。外の景色も順光で見られるのできれいに見えるというメリットもあります」。

 それは盲点でした。

 北向きのオフィスを上手く利用するために、積極的に太陽光の反射板を利用することなども考えられますね。

「南側の方が冬は暖かくてよいと言います。しかし、オフィスではコンピュータなどから発生する熱で、冬でも空調は冷房になっていたりするのが実情です」。

 本当ですか? 知りませんでした。

「それでは南側の壁面はどうしましょうか? 効率がもっと良くなれば太陽電池をつければよいでしょう。それまでは植物でも這わせておきましょうか」。

 効率の問題もありますが、それより、セルの製造時のコストや環境負荷の問題の方が大きいと思います。つまり、もっと安価に低環境負荷で製造できるようになれば、どんどん使えます。

「オフィスビルのベランダでブドウを栽培するというのは無理ですか?」。

 スイスのパーマカルチャーではキーウィを植えていますよ。寒さにも意外に強いです。

(スイスの山脇:54歳:入門「近自然学」筆者)


■=筆者からのレス=
(gari:32歳)さんのコメントに

「メーカーでは、製造時のエネルギーを1.5年で回収できると言っています。運転・保守・廃棄・リサイクルを含めても、残りの18.5年以上のエネルギーが必要となるのでしょうか?」。

 この辺りの計算には、どんなファクターを加味するかで、大きな差が出ます。現状では、環境負荷を計算に入れません。メーカーとしては良いデータを出したいので、それは止むを得ないことです。しかし、社会の負荷になっていることは事実であり、それは、間接的に他者が支払うことになります。

 そのような負荷には、石油の採掘・輸送・精製、シリコンなど原料の採掘・輸送・精錬、太陽電池製造時の大気汚染・化学負荷、パネルの洗浄による水質汚染と浄化、洗剤の製造にかかわる環境負荷、太陽電池廃棄後のリサイクルや廃棄物処理…などがあります。

 近自然学は市民の立場から環境共生共存を考えますので、これらの間接的なエネルギー投入や出費を見逃すわけにはいきません。とは言え、私自身、太陽電池の将来に期待するところは大きいのです。単に意地悪く過小評価しているわけではないので、この点はどうか誤解のないようにお願いします。正当に評価して、我々人類に有益な方向へ企業も含めて歩みたいと思います。

「また、発電効率10%というのは、最低レベルのスペックの製品で、最高レベルのものは16%近いものがあります。太陽電池のスペックを過少評価することになってしまうのではないでしょうか? 最高スペックのものでなくとも、その中間である数値を入れるべきではなかったではないでしょうか?」。

 読み返してみると、私の書き方は誤解を生む可能性があることに気付きました。お詫びして、説明を加えます。

 私の真意は以下です。

 現在の太陽電池のエネルギー変換効率は、平均すると約13%ほどでしょう。ご指摘いただいたように、最新のものはこれをかなり上回っているようです。これらが市場に安く出回るようになれば、その平均値を上げてくれることでしょう。

 ただし、これらのデータはかなり整った条件下での測定値と言えます。実際にはパネル面の汚れや経年劣化で効率は落ちてしまいます。ライフサイクルを通した実質的なエネルギー変換効率は、約10%と見るのが妥当だと言われます。もちろん技術進歩で、この値は次第に上って行くでしょうが、エネルギー変換のない太陽熱温水器の効率80%のレベルには永久に到達できないことは確実です。これは物理学の法則から来る限界ですから、いかんともいがたいものがあります。

 私自身、セルのエネルギー変換効率を上げるより、本田技研の取り組みのように、製造エネルギーやコストの低減、そして環境汚染物質からの脱却の方向を支持します。太陽エネルギーは低密度で分散したエネルギーなので、高効率で高価なセルよりも、ほどほどの効率で安く環境負荷の少ないセルを広く普及させる方が、ずっと理に適っているからです。

「素人の私が見るところ、山脇さんの主張とメーカーの主張が食い違っているように思えるのですがどうでしょうか?」。

 着眼点と利害が違うので、それは致し方ないことだと思います。

 いずれにしても、的確なご指摘、そして大変有益な情報どうもありがとうございました。

(スイスの山脇:54歳:入門「近自然学」筆者)

■シグナスミル。どんな製品か調べたら、鳥人間コンテストというか、日大の人力飛行機にかかわったことがある、野口さんの会社の製品なんですね。

 へーぇ、おもしろそう。

 産学連携プロジェクトでこういうモノが作られるってことは、理工系の大学も頑張っているんですね。

 建物の屋根には、太陽熱温水器とお手ごろ価格になった垂直軸型風車が並ぶっての、いいですよねー。

 でも、エネルギー消費が多そうな都会に限って、お隣が近すぎて、無理なのかな?
(kemeko:40代:兼業主婦)
■読者の方から太陽電池についてコメントがありました。私は太陽光発電システム全体の実用上の効率やエネルギー回収年数に興味があります。それらの総合指標を見たことがないからです。天候や気温の変化、インバータの変換損失、などを加味したものです。地域別の年間実用効率などの指標があれば、消費者にとっても有用だと思うのですが…。
(fusa:40歳:製造業情報システム部門)

■特集、拝読させていただきました。

 山脇さんのおっしゃるとおり、現在、代替技術として導入されている製品はその製造にかかるコストをペイできるだけの発電効率を持つものはほとんどないでしょう。アルミ製造業者がアルミの再生にかかるエネルギーは3%とうたいながら、リサイクルに積極的でなく(儲からない)、実は裏に隠れたエネルギー消費(コスト)が存在するのと同じで、企業から発表される情報のほとんどは「局部的に見れば正しい情報」を提示しているに過ぎないというのが実情です。

 実際には、はるかに大きなエネルギー消費(コスト)が裏に隠れているのが一般的。企業が都合の悪いデータを提示しないのは当たり前です。また、ほとんどの企業は材料の劣化による発電効率の低下を計算に入れず、ペイできるまでの時間を計算しているところが多い。この点も、計算値の矛盾点として挙げられます。

 実際に代替技術を使ってペイできるのであれば、その企業は電気代をかけずに製品を作ることができ、大もうけできるはずです。実際には、自社のエネルギー消費を賄うことはできないため、いまだ既存の発電システムに頼っていることからも実現不可能なことは明白でしょう。

 以上のことや山脇さんのおっしゃらている点からも、現時点でこれらの代替技術によるシステムを導入することは健全な方法ではなく、技術革新が起こるまでまで支援を続けるというのがよいと思われます。

 現在は捨てられているエネルギーを再利用する方法である「ゴミ焼却場の廃熱の有効利用」や間接熱利用などについてはシステム全体としてペイできるのであれば有効かとは思われます。

 しかしながら、山脇さんの仰られていることに幾つか疑問に思う点があります。結論から言えば、地表に降り注ぐ太陽エネルギーや風力などの自然エネルギーを搾取して石油エネルギーの代わりに使う方法は自然そのもののバランスを崩壊させる可能性が高いと思われます。

 実際にそのバランスを崩したものとしては、その昔に盛んに行われたダム建設があります。ダム建設の目的は治水、水源の確保の意味もありますが、水の落下エネルギーからエネルギーを得るといった目的もありました。

 しかし現在ではこのダム建設による水流の停止、抑制、放流による自然破壊が、大きな環境問題となっていることはご存じかと思います。山脇さんの仰っている太陽光、風力などの搾取もこのダム建設と同じ結果を生むと思われます。

 地球の気候は太陽エネルギーを源に微妙なバランスをとっています。もし、人間の活動が必要とする多くのエネルギーを搾取すれば、そのバランスが崩れるのは明白です。例えば、人間の活動規模で自然界の風力を搾取すれば、その風によって換気を行っている森林はその密度を減らし、単位面積あたりの植生数を減らすでしょう。自然界全体の空気の流れや水の流れは、太陽光による熱が源であり、空気の流れ、水の流れが止まれば地球は次第に冷え氷河期が訪れることでしょう。

 われわれ人間よりはるか昔から、太陽によるエネルギーとそれによって生まれる空気や水の流れに恩恵を受け繁栄してきた種族がすでに存在しています。それは植物です。植物は太陽エネルギーにより、活動するためのエネルギーを作りながら生きています。

 しかし太陽光から定常的に得られるエネルギーでは、彼らがその場から移動できるほどのエネルギーをまかなうことができません。そのため木はできるだけ少ないエネルギーで活動できるよう自分の体の一部を死んだ状態にすることでライバルよりも多くのエネルギー(太陽光)を得られるよう自分をより大きくしています。

 その他の植物も体内を空洞にすることにより、自己のエネルギー消費を削減するよう工夫し進化してきています。このことは、太陽から降り注ぐ定常的なエネルギーでは人間の活動を賄えないことを意味しています。

 動物は必ず、貯蔵されたエネルギーである石油などの天然資源、植物が蓄えたエネルギー(果実など)を消費して生きています。このことは植物が食物連鎖の頂点に存在しないことからも明らかだと思われます。

 人類がこの先永遠に栄えるかどうかは別にして、自然のエネルギーを搾取することは氷河期のような劇的な変化を地球に及ぼす可能性があるのではないかと思います。そのことについてどうお考えか、可能であれば意見をお伺いできればと思います。
(masAki:27歳:IT関連)

■=筆者からのレス=
(kemeko:40代:兼業主婦)さんのコメントに

「建物の屋根に、太陽熱温水器とお手ごろ価格になった垂直軸型風車が並ぶっての、いいですよねー。でも、エネルギー消費が多そうな都会に限って、お隣が近すぎて、無理なのかな?」

 無理じゃないと思いますよ。ただし、低密度で、広く分布している太陽エネルギーだけで都市の全エネルギー需要を賄うのは難しいでしょう。だから、ありとあらゆる再生エネルギー(太陽熱、太陽光、風力、雨水、間接熱、地熱、落葉…など)を徹底利用したいです。

 風力は動力で使い、重い石を持ち上げる(位置エネルギーを増やす)など「機械的なエネルギーで貯蓄する」のが基本だとお話しました。ですから、ダイエットや運動不足解消のための室内自転車も、この風車に接続して利用できるかもしれませんね。

(スイスの山脇:54歳:入門「近自然学」筆者)

■=筆者からのレス=
(fusa:40歳:製造業情報システム部門)さんのコメントに

「私は太陽光発電システム全体の実用上の効率やエネルギー回収年数に興味があります。それらの総合指標を見たことがないからです。天候や気温の変化、インバータの変換損失などを加味したものです」。

 これは多くの方々が持つ興味だと思います。

 (gari:32歳)さんへのレスでも書きましたように、計算のための条件の設定次第で、結果が大きく変わります。環境負荷に対しては、それをリカバリーするためにエネルギーを使います。ですから社会全体としては、エネルギー支出になります。でも、現在の効率計算にそれは入っていません。

 環境負荷を含めた正確な計算は至難です。「総合指標」をどう定義するかが大きな問題となるからです。

 単純に、消費者の、それも現行の法体系の下での条件であるなら、投入コストと軽減される電気代の比較で見ることができます。または、製造のために必要なエネルギーと、獲得できるエネルギーとの比較です。一般的な計算はこの二つでしょう。

 本当の収支計算は、上述したように、原料の製造から製品の廃棄までの、それも環境負荷まで加算することになります。それは生易しいものではありません。

 計算に必要な直接的なファクターとして、その地域での日照時間、セルと太陽との角度、セルの経年劣化による効率低下、セル表面の汚れによる効率低下、ダイオードやインバータなど電気回路によるロス、バッテリーによるロス、などが考えられます。間接的なものは、原料の獲得・精錬・輸送・環境負荷、製品の製造にかかわるエネルギー投入と環境負荷、製品のリサイクルや廃棄に関するエネルギー投入と環境負荷、などでしょうか。

(スイスの山脇:54歳:入門「近自然学」筆者)

■=筆者からのレス=
(masAki:27歳:IT関連)さんのコメントに

「山脇さんのおっしゃっている点からも、現時点でこれらの代替技術によるシステムを導入することは健全な方法ではなく、技術革新が起こるまで支援を続けるというのがよいと思われます」。

 masAkiさんが言われること、理解できます。でも、私はそうは思いません。

 確かに、工場のように、集中したエネルギーが必要な場所では、従来の化石資源エネルギーに代表される集中エネルギーが効果的です。しかし、エネルギーの集中がそれほど必要でない場所もあります。個人の住宅などその典型でしょう。

 ここでは分散エネルギーである太陽エネルギーの利用が理にかなっています。もちろん“地産地消”です。連載の本文でもお話したように、従来の集中エネルギーのためのエネルギーシステムに、「代替」エネルギーとして太陽エネルギーを投入するのは、うまいやり方とは言えません。つまり、我々は分散エネルギーの使い方に慣れておらず、これからそれを考え、実践しなければならないのです。

「山脇さんのおっしゃっていることに幾つか疑問に思う点があります。結論から言えば、地表に降り注ぐ太陽エネルギーや風力などの自然エネルギーを搾取して石油エネルギーの代わりに使う方法は、自然そのもののバランスを崩壊させる可能性が高いと思われます」。

 単純な計算で、人類の必要としているエネルギーは、大目に見ても太陽エネルギー全体の1万分の1にすぎません。しかも、その利用に際しては、地表の1万分の1の面積をパネルで覆うわけではなく、太陽熱、太陽光、風力、波力、水力、間接熱、バイオマス、地熱、潮汐、……などさまざまな直接・間接太陽エネルギーを多様に、しかも分散して利用します。これがまず1点。

 それから、太陽エネルギーを含めて、すべてのエネルギーは、我々が使おうが使うまいが、最終的には熱になります。これが2点目です。この2点の理由により、太陽エネルギーの利用によって自然のバランスが大きく崩れるとは考えられません。杞憂だと思います。

「実際にそのバランスを崩したものとしては、その昔に盛んに行われたダム建設があります。…山脇さんのおっしゃっている太陽光、風力などの搾取もこのダム建設と同じ結果を生むと思われます」。

 ああ、なるほど、それがおっしゃりたかったのですね。

 大規模なダムは、確かに自然のバランスを崩す危険が大きいでしょう。それは、分散エネルギーである太陽エネルギーを集中させることに無理があるからです。論理的な破綻と言ってもいいかもしれません。ただし、その問題を承知で、我々の豊かさのために選択する姿勢もあり得ます。それは化石資源エネルギーの選択と同じことです。

「地球の気候は太陽エネルギーを源に微妙なバランスをとっています。もし、人間の活動が必要とする多くのエネルギーを搾取すれば、そのバランスが崩れるのは明白です」。

 masAkiさんの危惧、理解できます。

 地球のバランスを崩さないように配慮することは重要です。ただし、熱という観点で見れば、人間が途中で使おうが使うまいが、太陽エネルギーは最終的にすべて熱エネルギーとなり宇宙空間に放出されます。エネルギーを使うということは、エネルギーの形を変えるということに他なりませんから、人間が使ったからといって、最終的に発生する熱エネルギーは減りません。ですから、それによって収支バランスが崩れることはないでしょう。

「その他の植物も体内を空洞にすることにより、自己のエネルギー消費を削減するよう工夫し進化してきています。このことは、太陽から降り注ぐ定常的なエネルギーでは人間の活動を賄えないことを意味しています」。

 確かに、おっしゃる通りでしょう。

 太陽光だけで十分なエネルギーを賄うことは難しいでしょう。ですから、あらゆる再生エネルギーを総動員し、不足分を化石エネルギーで補うことを、近自然学では提案しています。

「人類がこの先、永遠に栄えるかどうかは別にして、自然のエネルギーを搾取することは氷河期のような劇的な変化を地球に及ぼす可能性があるのではないかと思います。そのことについてどうお考えか、可能であれば意見をお伺いできればと思います」。

 自然のエネルギーを搾取することが「自然のエネルギーバランスを崩すこと」という意味なら、それは避けるべきでしょう。しかし、人類が太陽エネルギーの1万分の1を使っても、地球が寒冷化することはないと思います。地球は現在4回目の氷河期の真っ最中です。この4回の氷河期は人間の活動とは無関係に起こりました。

 今、我々が直面している問題は逆です。化石エネルギーの大量消費により、大気中のCO2濃度がどんどん上がり、温室効果により宇宙空間へ排熱されにくくなっていることです。その熱は99.96%が太陽からのエネルギーです。

(スイスの山脇:54歳:入門「近自然学」筆者)


山脇 正俊

近自然(工)学研究家
チューリッヒ州近自然工法アドバイザー
スイス連邦工科大学・チューリッヒ州立総合大学講師
北海道工業大学客員教授
電子メール:
masayama@aol.com
ホームページ:
http://members.aol.com/
masayama/

最新著書:
「近自然学」(2004年4月、山海堂より出版)
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