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入門「近自然学」〜豊かさと環境の両立は可能だ
プロフィール
新しいまちづくり〜環境負荷が小さく、人間主体の住みよいまちを考える(1)

2004/11/16

 都市は環境負荷が大きい。しかし、負荷が1カ所に集中しているため、同じ負荷であっても自然環境が受けるダメージが小さくて済むというメリットがある。また、充実したインフラを多くの住民が共有できるので、同じレベルの豊かさや利便性を、住民1人当たりに換算すれば少ない環境負荷で実現できる可能性も大きい。

 近自然学では都市を必要悪とは考えない。むしろそのメリットを積極的に生かし、我々の豊かさを高めると同時に、地球環境の受けるダメージを減らしたい。

 そのために我々にできることがある。「市街地の集中と高密度化」、「大都市のユニット分割」、「職・住・商・食・学・緑などの近在」である。

 新しいまちづくりでは、以下のテーマを順番に取り上げていく。

  • 都市は環境負荷が大きいか?
  • 住みにくくなってしまった都市
  • 市街地の集中と高密度化が環境へのインパクトを減らす
  • ユニット(小単位)分割により適度にコンパクトな都市を実現
  • 職・住・商・食・学・緑などの近在が、日々の人の移動を減らす
  • 都市における緑地の重要さ
  • ランドシャフト(気持良さ)は住民の共有財産

1.都市は環境負荷が大きいか?

 地球環境がここまで悪化したのは、世界中の都市化が原因であるという見方もできる。都市は、存在するだけで環境負荷が大きいのだ。

 しかし逆に、環境負荷が1カ所に集中しているため、「負荷は集中、対策は分散」の原則により、同じ負荷でも自然環境の受けるダメージが少なくて済む。また、整備されたインフラを多くの住民がシェアできるので、同じレベルの豊かさや利便性を、人口1人当たりに換算すれば、より小さな環境負荷で実現できる可能性もある。

 そんなわけで近自然学では、都市を単なる必要悪とは見ない。我々の豊かさや環境のために、これを積極的に活用したい。そのために、我々の豊かさや利便性がさらに増し、それが同時に環境負荷の低減につながるような方策を模索し提案したい。

2.住みにくくなってしまった都市

 都市とは何なのか? なぜ人々は都市にあこがれ、都市に暮らしたいのか?

  • 多くの雇用と高い賃金
  • 多様な教育の機会
  • 活発な文化活動:映画、コンサート、演劇など
  • 魅力的なブティック、デパート、専門店などと豊富な商品
  • 多様で美味しい飲食店や歓楽街
  • 整備されたインフラ
  • 近代的で洗練された生活
  • いろいろな要素がすぐ近くにある

 などが思い浮かぶ。どうやら、都市は我々にとって「物資的な豊かさ」の象徴であるようだ。いや、「あった」ようだ。現実の都市はどうだろう? 我々の期待に応えてくれているだろうか?

 溢れる失業者、激しい受験戦争、劣悪な住環境、家賃を筆頭に高い物価、画一的で醜いまち並み、通勤通学に時間がかかる、日常的なラッシュや交通渋滞…。もちろん都市には素晴らしい面もある。しかし、今の都市はとても住みにくくなってしまったとは言えないだろうか。

 近自然学では、環境負荷を低減するだけでは不足と考える。心の豊かさや精神的充足感なども含めて、気持のよい、住みよいまちにできなければ、共生共存を目指す近自然学としては失敗であると考えたい。

3.市街地の集中と高密度化が環境へのインパクトを減らす

 同じ負荷で環境へのインパクトを低減するにはどうしたらよいのか?

 実は、ここでも「負荷は集中、対策は分散」の原則が有効である。

 都市などの土地利用において、我々が欲しいのは面積だ。しかし、市街地が周辺の自然環境に与えるインパクトは、その周辺の長さに依存する。周辺の長さが長いほど、自然環境の受けるダメージは大きく、短いほど小さい。つまり、同じ利用面積で周囲長が最短になるようにしたい。

 同じ面積を分割せずにまとめると、その周囲の長さは減る。つまり、周辺へのインパクトが減るわけだ。これが、「市街地を集中すべき」という理由である。

 同じ面積を四つに分割した場合、二つにまとめた場合、そしてさらに一つにまとめた場合の周囲の長さは、1→0.7→0.5としだいに小さくなる。それだけ、周辺へのインパクトが減ることを意味するのだ。

 また、同じ面積を1層で実現するのではなく、2層、4層と階層化して実現すると、やはり周囲の長さが減る。つまり、環境へのインパクトが減るわけだ。これが高密度化である。

 ただし、近自然学では高層建築を推薦しているわけではない。我々の身体的条件を考慮して、エレベーターなしでも苦痛にならない4階建て程度を目標としたい。ちなみにスイスのチューリッヒ市内では6階建てが一般的だ。しかし、最上階への階段での上下は、高齢者には厳しい。

 もちろん、高層建築に意味がある特定の場所が存在する可能性は否定できない。

 家を4軒建てるとする。これを自然の中に分散して建てるなら、環境へのインパクトは、1軒当たりのインパクトを4回加算したしたものとイコールになる。しかし、1カ所にまとめて団地とすると、環境が受けるダメージは減る。さらに4階建ての建物1棟にまとめれば、さらにダメージは減るのである。

 逆に、同じ面積を分割し分散させたり、低層の一戸建てをずらーっと並べていくと、自然環境の受けるダメージはどんどん大きくなっていくので、できるだけ避けるのが得策だ。都市のコア部では一戸建てを禁止することも考えられる。現に、スイスやドイツでは「禁止」が普通だ。

低密度のまち(写真提供:中島淳司氏)
(クリックすると拡大表示されます)


 次回は、「ユニット(小単位)分割により適度にコンパクトな都市を実現」、「都市における緑地の重要さ」などについて説明する。

(山脇 正俊=近自然学研究家)

山脇 正俊

近自然(工)学研究家
チューリッヒ州近自然工法アドバイザー
スイス連邦工科大学・チューリッヒ州立総合大学講師
北海道工業大学客員教授
電子メール:
masayama@aol.com
ホームページ:
http://members.aol.com/
masayama/

最新著書:
「近自然学」(2004年4月、山海堂より出版)
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