2003年3月に大阪ガスと東邦ガス、西部ガスの3社が売り出した、家庭用コージェネレーション(熱電併給)システム「エコウィル」が予想以上の売れ行きを見せている。夏以降、静岡ガス、広島ガス、鳥取ガスも販売に加わるなど、新規参入も増えている。
エコウィルは、ホンダが開発した出力1kWガスエンジンに排熱利用システムを組み合わせたもの。都市ガスを燃料にガスエンジンで発電し、排熱から約80℃のお湯を作って、給湯や風呂、浴室暖房、乾燥機、冬場の暖房に使う。電気と熱を合わせた総合エネルギー効率は80%を超える。
2003年春から先行販売した大手ガス会社は、3社合わせて2003年中に2400台の販売を計画していた。しかし結果は、6社で約3500台。ホンダは、LPG(液化石油ガス)使用のシステムも開発済みで、2004年は合わせて9000台の販売を見込んでいる。
もともと家庭用コージェネ市場は、携帯用と並んで、固体高分子型燃料電池(PEFC)の応用製品が、最も早く普及する可能性が高いとされていた。というのは、コストターゲットが相対的に低いからだ。それぞれの競合製品は、携帯用燃料電池がリチウムイオン二次電池、そして家庭用燃料電池コージェネが湯沸かし器とされてきた。
燃料電池の1kW当たりの価格は現在数十万円とされているため、数十Wで済む携帯用燃料電池の場合、すでにリチウムイオン二次電池に近い製造コストの実現が視野に入っている。また、家庭用燃料電池の場合、「いまの燃料電池のコストを1けた下げれば、コージェネシステムとして湯沸かし器と競争でき、これは不可能ではない」(ガス会社)とされる。
これに対し、自動車の場合、ガソリンエンジン出力1kW当たりの価格は、その圧倒的な量産効果から約1万円まで下がっているため、「燃料電池の価格を2けた下げないとガソリンエンジンと競争できない」(自動車メーカー)のが実状。それが「燃料電池車の普及は10年以上先になる」(自動車メーカー)とされる大きな理由の1つだ。
ところが、家庭用コージェネの方も、「エコウィル」のヒットで、ガスエンジンが競争相手となる可能性が出てきた。ガスエンジンはガソリンエンジンほど量産化が進んでいないとは言え、従来からある汎用部品を転用できるコストメリットは大きい。
独自の燃料電池開発も強化しているホンダが、「当面、家庭用燃料電池コージェネを開発する計画はない」としているのは、こうした市場分析が背景にある。三菱重工業が1kWの家庭用燃料電池コージェネの開発を進めつつも、「エンジン発電機と競争してコスト的に十分に太刀打ちできる燃料電池の出力規模は、50〜100kWの集合住宅向けだろう」(三菱重工の佃和夫社長)と冷静に分析している。
大阪ガスは、「ガスエンジンと燃料電池は、同じ家庭用コージェネシステムの発電機として、住み分けられる」と見ている。ガスエンジンの発電効率は約20%がやっとなのに対し、燃料電池は現時点の試作機でも、天然ガスから水素を取り出す効率を差し引いても約30%を達成している。
「電気と熱を合わせた総合エネルギー効率ではどちらも約80%だが、電気を多めに使う家庭には燃料電池コージェネが向いている。加えて、集合住宅など静粛性が求められる設置場所には、燃料電池コージェネが圧倒的に有利」(大阪ガス)としている。
ただ、ガス会社の本音は、電力会社による「オール電化住宅」攻勢に対抗できる“最終兵器”としての「ガスを燃料にした発電機の普及」にあるのは明らか。それがガスエンジンであるか、燃料電池であるかはさほど重要な問題ではないとも言える。
コストに優り、売りやすいガスエンジンコージェネが好評ななか、後発となる家庭用燃料電池コージェネをガス会社がどこまで本気で販売するかは予断を許さない。「エコウィル」のヒットで、家庭用燃料電池コージェネの市場性に不透明感が出てきた。
(金子 憲治=日経エコロジー副編集長)