環境によい行動とは何かを考えるとき、「少なくとも現段階では、環境によいものを<買う>ことに重要な意味がある」を原則として考えてきました。
この原則には、違和感を覚える人が多いと思います。環境問題は、今の大量消費型の生活態度が大きな原因になっています。欲しくても、それほど欲しくなくても、消費することそのものが価値になっている行動形態が、最も大きな環境問題だと言うことができるからです。
このような大量消費社会の裏側には、「経済面での成長が社会の豊かさを示している」という考えがあります。「企業の成長=経済成長=善」という考え方によって、社会のほとんどすべての仕組みが出来上がってしまっている現状があります。GDPや貿易額の成長が人間の豊かさを示す最も重要な指標だと考えられている現状を、いきなり無視することはできません。
大量消費そのものを短期間にやめることは、消費によって成り立っている企業活動の停滞、ひいいては国の経済の停滞を意味します。もちろん、「経済的な発展が個人の生活の豊かさとイコールではない」という議論はしていかなければなりません。ですが、現時点で社会は、経済的な指標を超える別の指標を持つことができていません。経済的な成長を否定するような動きを、社会はうまく受け入れていくことができないのです。
こうした経済学的、哲学的なアプローチを深めていく必要があります。しかし、それはこの連載の目的ではないので、このくらいにしておきます。ここで確認しておきたいのは、多くの人々の現在の生活を考えると、「経済発展を否定して環境をよくする」というアプローチは今ひとつ説得力がないこと。経済を、一定の、そう高くない水準で発展させるのと同時に、環境的な改善を図っていくアプローチが現実的だと言えるのです。
買うのではなく「借りる」
さて、「環境によい製品を積極的に買っていく」という考え方をとるときに、それに近いもう一つのアプローチとして有望なのが、「借りる」というアプローチです。21世紀の前半50年間ぐらいを考えたときに、環境生活の中核を担う考え方は、「買うより借りる」もしくは「所有から利用へ」と転換すると考えられます。
「借りる」動きは具体的に少しずつ始まっています。その代表例が「カーシェアリング」です。
今、クルマを一定の頻度を越えて使う人は、買って利用しています。しかし、その利用頻度はどうでしょう。都市部の会社員世帯では、利用の大半が休日に偏っていて、ウィークディは駐車場に置かれっぱなしになっています。一方、企業が使う社用車はウィークディが利用の中心です。であれば、それぞれが空いているときに利用する仕組みをつくれば、ムダなクルマを減らすことができると考えらます。
利用形態の違う人同士がクルマをシェアする(必要に合わせて利用する)ことができれば、余分なクルマが社会にあふれることがなくなります。所有するのではなく、空いているときにお互い使い合うという、レンタカーと所有の中間的な利用方法がカーシェアリングなのです。
実際には、個人ユースとビジネスユースではクルマに求めるスペックが違うために、同じクルマを両方で使うのは難しいでしょう。週末ユースの人とウィークディユースの人が同じクルマをシェアするのが最も効率がいいのですが、そこまでの「使い倒し」の仕組みでなくても、一定の成果を上げることは可能です。
週末利用が多い人でも、週末のすべての時間でクルマを使う人ばかりではありません。「土曜日は使うが、日曜日は使わない」という人がいれば、日曜日は別の人が使えるようにするだけでも、ムダがなくなります。
クルマが空いている時間が一切ないように(稼働率を限りなく100%にするように)シェアすることを理想にすると、それは無理だろうと考えてしまいます。しかし、今、大都市部にあるクルマの平均的な利用率が日数の20%くらいしかないとすれば、シェアによって稼働率を30%にするだけでも、クルマの台数を大幅に削減することができます。
台数が減れば、当然クルマを作るための資源消費が減り、駐車場スペースが少なくてすみます。そこを緑地にできれば環境保全になり、住宅にすれば生活の質を上げることができます。
こういう方法だと、クルマの販売台数が減って、経済活動が低下してしまいそうです。しかし、販売台数が減った分はクルマのシェアサービスで売り上げを立てるようにすれば、売り上げ・利益ともに確保することが可能です。
シェアリングならではのメリットを提供する必要がある
ユーザーにしても、利便性が損なわれないか、もしくは利便性が上がるなら、所有するのと同額を払っても不満はないでしょう。所有しなければ、所有にかかわる税金などの支払いも減るので、「シェアリングサービスに多めの料金を支払ってもよい」と考える人が出てきても不思議ではありません。
ユーザーが払うカネに注目すれば、税金に払う分を民間企業が提供するカーシェアリング・サービスに払う、ということになります。個人は同じ金を払うだけ。企業は、税金として支払われていた分も自社の売り上げや利益にすることができるのです。
とはいえ現状では、カーシェアリングをはじめとするレンタルサービスはまだまだ一般的ではありません。先行事例もあまり成功せずに撤退している状態です。クルマを所有するのに代わるメリットを、ユーザーに対して提供できていないことがその理由です。
しかし、
(1)利用時の手軽さ:近くのシェアリングショップに行けば、いつでも燃料満タンのクルマを使える
(2)クルマを「自分の部屋にする」工夫:バスケットに私物のCDなどを入れて、借りた車にさっと持ち運べるようにするサービスなど
(3)車種を選べるメリット:大人数で乗りたいとき、荷物が多いとき、都心に行くので小回りを効かせたいときなどに、最適の車種を選べる
など、シェアリングならではのメリットを生かすことができれば、合理的な考えを持った人々がクルマの所有をやめ、シェアリングを選ぶようになるでしょう。
レンタルやシェアリングが環境によいことは事実。もっと広めるべきです。しかし、「環境によい」というだけで人々は動きません。「あれこれメリットがある」上に、「環境にもよい」となって初めて、人はサービスを利用したくなるものです。ユーザーとしては、自分が欲しいサービスを企業にどんどん伝え、便利で環境にもよいサービスを、世の中にどんどん増やしていくことが、大切な役割になります。
(渡辺 パコ=知恵市場)