最新作「ハウルの動く城」が公開され、さらに注目を集める宮崎駿監督のアニメ。本書は、「ハウル…」のほか、「となりのトトロ」、「千と千尋の神隠し」、「風の谷のナウシカ」、「もののけ姫」を取り上げ、隠されたメッセージを読み解いていく。
何より、著者がそれぞれの作品の実に細かい部分に目を向け、込められた意味を探ろうとしていることに驚く。
例えば、「トトロ」に何度か出てくるカレンダーの日付と曜日の関係が合わないことに注目し、その理由を探る。「千と千尋」で描かれる月の形の意味を推測するという具合。登場人物の名前、背景に映る小物、セリフの1つひとつまで、制作者の意図を読み取ろうとする。
制作者はそこまで狙って作ったのだろうかと、素朴に疑問に感じる面もある。だが、こうして緻密に分析していく中で明確になるメッセージも確かにある。
例えば、「もののけ姫」が人間と自然の対立をテーマとし、人間の環境破壊を戒める内容であることはだれにも分かる。だが、著者は多くの人が見過ごしてしまいそうな場面に重要な意味を見出だす。
自然と人間の対峙場面の意味
作品の終盤、「自然」を代表する存在であるシシ神や山犬と、「人間」の代表であるエボシが対峙する場面。シシ神はエボシが持つ石火矢に芽を吹き出させるが、力ずくで倒そうとはしない。山犬もエボシの腕を食いちぎるだけで殺すことに失敗したかに見える。
だが、著者はこの場面には「一人のリーダーを殺して一人の人間に対する恨みは晴らせても、その一人を動かしている社会全体の自然破壊の動きを止められるものではない」という意味が込められていると分析する。
重傷を負い、山犬の背で運ばれたエボシの「山犬に助けられるとは」という言葉は、「勝ち負けを超えて、山犬と共存しなければ生きていけないことを認めた…価値観と生き方を変え、自然とともに生きなければならないことを受け入れた」と読む。
こうして、制作者のメッセージを細やかに探ることで、作品がさらに奥行き深く感じられる。人間と自然の共存に関する著者の見方も非常に示唆に富む。
宮崎アニメは、自然や環境をテーマとする作品が少なくない。自分では気づかなかった意味や意図を感じさせてくれる本書は、一読の価値がある。
(経済ジャーナリスト・小林佳代)
■この記事は日経エコロジー2005年4月号に掲載されたものです。
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書名:「宮崎アニメ」秘められたメッセージ
著者:佐々木 隆
出版:KKベストセラーズ/価格819円(本体780円)
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