著者の一人は、名門小売業シアーズ・ローバックの復活を指揮した元会長兼CEO。この復活は、「アメリカ産業史におけるもっとも劇的な再建」とも称された。95年から2000年までの大胆なリストラと本業への集中で再建を実現した過程を自ら語る。
本書を読んでいるうちにすぐ気づくのは、企業組織が低迷する原因は、国に関係なく、どこも同じであるということだった。
例えば、利益ではなく、売り上げを重視し、また実際に売り上げを上げた人が評価される企業風土。毎年、膨大な赤字を計上しているのに、それが伝統的な事業という理由だけで、なんら改善の手を施そうとしない経営陣。自分たちの権益を守ることに汲々とし、改革をサボタージュする部門のリーダーなど。
これらの話は、日本企業特有の問題だと思っていたが、企業組織が陥る悪弊には、国境は関係ないようである。
大きくひと括りにして言えば、官僚的文化の弊害、つまり物事をなんでも自分に都合のいいように解釈して、顧客を蔑ろ(ないがしろ)にする態度が、企業を腐らせているのである。
本書は、著書が実際にどうやって改革を行なったという問題解決の部分よりも、著者がどこに同社の欠点を感じたかのという問題発見の部分に、記述を割いている。そのため、痛快無比の企業改革ものを期待して読むと、少々肩透かしを喰らうかもしれない。
しかし、自分が勤める会社の企業風土に対して危機意識を持っている読者が読むと、本書のケースとあまりに共通点が多いことに驚くのではないか。
会社組織というものを、より客観的に考えるために、本書は役立つだろう。
それにしても、社員が自社の歴史と伝統に誇りを持つがあまり保守的になり、その結果として市場の変化への対応が遅れて業績が低迷していくというのは、企業という組織が持つ最大の皮肉だと言えるかもしれない。
著者は、もともと経営の建て直しを期待されて招請された、もともと完全な部外者だった。だからこそ、市場の現状に合わせて自社を改革するという“当たり前”のことが可能になったと言える。
しかし、よりしがらみ文化の強い日本企業を思うとき、部外者でなければ企業改革はできないとのか思うと、ちょっと絶望的な気分になる。
【今月の教訓】
アメリカ企業も日本企業も組織が腐敗していく理由は同じ
書名:巨大百貨店再生
著者:アーサー・マルティネス、チャールズ・マディガン著
出版:日経BP社/税込価格: \2310(本体: \2200)
■□■著者プロフィール■□■
〈マルティネス〉ブルックリン工業大学卒業。シアーズ・ローバック・アンド・カンパニー会長兼CEO、シカゴ連邦準備銀行会長など歴任。
〈マディガン〉シカゴ・トリビューン・コラムニスト。

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