通常、部品を新たに作るときは、部品メーカーの開発費を委託側がどう負担するかについて、契約のパターンがあります。開発費をこちらが全面的に負担する代わりに、部品メーカーは他社には販売できないようにする。あるいは、こちらは開発費の一部のみを負担。最初の数万個だけは、こちらに独占的に供給してもらう。または委託側の負担はなし、ただし、他社向けより安く供給してもらう。大体、この3パターンです。
ところがキーボードの開発費の話題になったとき、部品メーカーが「開発費はいらない」と言うんです。素晴らしいアイデアで製品を作ることができた、これで十分だと。ありがたい話です。握手して別れました。
しばらくして、発売されたEee PCを見たら、うちと同じ形のキーボードが採用されていた。
Eee PCの発売元ASUSは、世界第4位のパソコンメーカー。部品メーカーは、これに採用されるなら十分、元は取れると判断していたのでしょう。そもそもその台湾のメーカーも、キーボードでは世界の超大手。私たちのような小さな会社と付き合ってくれたこと自体が、ありがたいことなんです。
さらにキーボードの良さと並んで挙げるべきなのは、ヒンジです。パソコンは既存の部品の組み合わせで作りますから、完全にオリジナルな部品は、どのメーカー製品にもそう多くない。私たちの完全にオリジナル部品は、実はヒンジだけ。価格的、性能的に見合うものがなかったので、このヒンジだけは新たに作りました。
ヒンジは、うちの優秀なエンジニアが、土日を徹して図面を引いた素晴らしい部品です。部品の耐用試験は、通常2万回の動作に耐えられるかを基準に行います。このヒンジは17万回の動作に耐えました。これ以上続けたら試験をする機械の方が壊れるかもしれないので、やめました。
ともかく、今の形にたどり着いたのは、アペラの失敗があったからでした。
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