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── そのレコードには、1919年にカナダが独立を果たした日の国会議長のスピーチが収録されていた。傷みが激しく、また摩耗を怖れるため、だれもその声を聴いたものは居なかった。だからレーザーターンテーブルがこのレコードを再生した日は、カナダ国民にとって記念すべき日となったのだ。翌日の新聞は1面でこのことを報じ、地元のラジオ局は何度もスピーチを放送した。──

カナダでの成功体験は、我が社にとっても非常に大切なものになりました。レーザーターンテーブルの導入が、一国を挙げての一大イベントになり得ることを身をもって知ることができたからです。その後の開発でも、資金が尽きかけたり、有能な人材が辞めてしまったりと、辛いことが何度となくありました。その都度、この体験を励みにして、頑張ることができました。「自分のやっていることを喜んでくれる人が居る」と実感できることほど、モチベーションを維持してくれるものはありません。

レーザーターンテーブルのフロントパネル。曲の頭出し・ランダム再生・リピート再生など、CDプレイヤーと同等の操作性を確保している。

「あなたはスティービー・ワンダーを知らないのか?」「知りませんな」

カナダでの成功が伝わったのでしょうか、こんなこともありました。ある日、米国から国際電話が入ったのです。電話の向こうの男性はこう言いました。「私はスティービー・ワンダーのマネージャーをしているピーター・パーゴという者だ。実はワンダーがレーザーターンテーブルを2台買うと言っている。ついては値引きをしてもらえないだろうか」と。

値引きをするのが当然、と言わんばかりの態度に私は少々むっとして言い返しました。「レーザーターンテーブルは手作りの製品です。2台お買い上げいただくとしてもディスカウントはできない」。するとパーゴ氏は驚いたふうで、「スティービー・ワンダーが使う、と言えば日本のAVメーカーは無料で製品を寄越すのだ。なのにレーザーターンテーブルには金を払う。ただちょっとまけろと言っているだけだ。これは御社にとっては大いに宣伝になる話ではないか」。

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