エルプ「レーザーターンテーブル」(2) 消え行くアナログレコードに新しい技術で再度光を当てる
(聞き手:諏訪 弘=フリーライター)
(前回記事はこちら)
エルプ社内の視聴室で、レーザーターンテーブルの音を聴いた。驚いたのは、その圧倒的な情報量である。息継ぎの音。衣擦れの音。各楽器の位置関係の確かさはもとより、歌手とマイクとの距離までもがはっきりと分かる。「アナログレコードにはこれほどの音情報が入っていたのか」と思わされた。
もう一つ特筆すべきは、音の自然さ、生々しさである。あたかもそこに歌手本人が居て、直接歌いかけてくれているように錯覚してしまうほどなのだ。視覚ではなく聴覚で存在を感じ取るのは、かつてない経験である。エルプ社長の千葉三樹氏は「レーザーで拾った音をデジタル変換せず、アナログのまま再生しているからです」と、その高音質の理由を説明する。

エルプ社内の試聴室。レーザーターンテーブルはマッキントッシュのアンプと接続されている。スピーカーはJBLの名器「4345」
最初の顧客はカナダの国立図書館
レーザーターンテーブルの市販を開始したのは1996年です。しかしそれ以前から「試作品でもかまわないから売ってくれ」という引き合いは時々ありました。

エルプの千葉 三樹社長
レーザーターンテーブルの最初のお客様は、カナダの国立図書館でした。1992年のことです。このときの売買契約は、不可解なことに、我が社と英国政府との間で結びました。つまり「英国がカナダ国立図書館に買い与える」という形を取ったわけです。どうしてそんな面倒なことをするのか、私には今でも理解の外です。おそらく、かつての宗主国と従属国の関係だろう、と想像しているのですが。
レーザーターンテーブルをカナダの国立図書館に運びセッティングを済ませると、館長さんが古ぼけたレコードを持って現れました。「これを再生してほしい」と。見ればそれは、遠目にも反っていることがはっきり分かるものでした。不安はありましたが、レーザーターンテーブルは見事にクリアな音質で再生してくれた。これには集まっていた報道陣も歓声を上げていました。
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