エルプ「レーザーターンテーブル」(1) レコード針を使わずにアナログレコードを再生する
(聞き手:諏訪 弘=フリーライター)
日本はもとより、世界中の音楽ファンの注目を集めている小さなオーディオメーカーが埼玉県にある。その名はエルプ。世界で唯一の針の要らないレコードプレイヤー、『レーザーターンテーブル』を製造しているメーカーだ。
顧客にはキース・ジャレットやスティービー・ワンダーなど錚々(そうそう)たるミュージシャンも名を連ねる。価格は100万円以上と、決して安価な製品ではないのに、世界各国から問い合わせや注文が引きも切らない。注文から納品まで数カ月は待たされる人気だ。
エルプ社長の千葉三樹氏は、かつてはGE(ゼネラル・エレクトリック)社の米国法人で副社長を務めた伝説のビジネスパーソンでもあった。しかし同社のテレビ事業をめぐり、当時の会長だった「あの」ジャック・ウェルチ氏と激しく対立して勇退。帰国後、ひょんなことからレーザーターンテーブルの存在を知る。「音楽にはあまり関心がない」という千葉氏だったが、「アナログレコードの文化を消してはいけない」と、開発・商品化への取り組みに着手した。その経緯を千葉氏に聞いた。

レーザーターンテーブル。外観デザインは試作品からさほど変わっていない。
レーザーでアナログレコードの「音」を読み取る
まずはレーザーターンテーブルの成り立ちについて、簡単にお話しておきましょう。

エルプの千葉 三樹社長
アナログのレコードに刻まれた音のデータを光学的に、すなわち非接触で読み取って再生するというアイデア自体は、実に70年以上も前からあったそうです。しかし、それを実現するにはあまりにも技術的なハードルが高く、「絶対に不可能」とされていました。
この不可能に挑戦したのが、米国の名門・スタンフォード大学で電気工学を専攻していたロバート・ストッダード氏。彼は仲間数人と会社を設立し、光学式レコードプレイヤーの研究開発に取り組みました。それが1984年のこと。その後4年の歳月と約20億円の費用をかけて、試作品の第一号を1988年に完成しました。
しかし、そこまででした。彼らはついに米国内では事業パートナーを見つけることができなかったのです。そこで日本の企業とアライアンスを組み、市販を目指そうとした。そのコーディネートを依頼されたのが、ほかならぬ私だったのです。
この話を私に持ってきたのは以前勤めていたGE時代の元同僚だった米国人です。当時の私はGEを辞めて1年目。東京・神田に立ち上げた小さなコンサルティング会社の切り盛りで多忙な毎日でしたが、「コーディネートくらいなら」と引き受けることにしました。そこで都内のホテルに会場を借りて、レーザーターンテーブルの発表会を行ないました。
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