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割増率アップでも期待薄、長時間労働是正と残業代増加〜労働基準法改正のポイント

2007年4月17日

(高橋 敏浩=日本総合研究所 研究事業本部 上席主任研究員)

 今通常国会へ提出された、雇用ルール改革を目的とする法案のポイントを連載で解説してきた。最終回は、残業代の割増率を引き上げるとする労働基準法改正案である。「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)」制度とセットで論議されていたが、残業代未払いになると懸念されたWEが見送られたために、割増率引き上げが単独で進められることになった。「残業代割増率アップ」は、残業せざるをえないビジネスパーソンにメリットがあるように見える。給与が多少とも上がり、なかなか減らない長時間労働の実態に対して、企業への抑止力になるだろうか。

 「単に割増率の論議ではすまない」と見るのは、日本総合研究所 研究事業本部 上席主任研究員の高橋敏浩氏である。ビジネスパーソンから見た残業代割増率引き上げの影響と問題点を、高橋氏にまとめてもらった。

「長時間労働に拍車」あるいは「80時間超のサービス残業増加」か

もし残業代の割増率が上がったら…収入増でちょっとうれしい? いや現実はそんな簡単なものではなさそうである。それは労働基準法の一部を改正する法案の概要が次のようなものだからだ。

  • 月間45時間以下:現行どおり25%以上の割増率
  • 月間45時間を超えて80時間以下:25%より高い割増率を労使で設定(努力義務)
  • 月間80時間を超える残業:一律50%以上の割増率を適用(大企業のみ、中小企業は猶予)

これらから生じえる問題を2つ指摘しよう。1つは“過労死ライン”と言われる「80時間」で線引きされたこと。大騒ぎする割には80時間まではほとんど何も変わらないということだ。80時間を超えるような残業をほとんどさせない、または禁止するくらいの対応が企業にできるだろうか。むしろ逆に「50%(以上)の高い割増率で払っているのだからうしろめたいことはなく、その分働いてもらうしかない」と健康管理面からの抑止力も効かなくなるのではないか。とすると、「長時間労働に拍車がかかり残業手当が増加」、もしくは「80時間超のサービス残業が増加」、といういずれにしても好ましくない展開が予想される。

もう1つは中小企業が当面猶予されることにより、労働者の8割を占める人々には実質的に影響がないことだ。激変緩和措置はよいとして、その後のことはこれから考えるというのも場当たり的で、あまりに中小企業の実態が考慮されていない。中小零細企業ではコンプライアンス対応も遅れており、猶予期間が過ぎれば賃金不払いをますます助長させる危険性がある。高い割増率で残業代を支給する大企業と、払えない中小零細企業の実質的な賃金格差がさらに拡大するだろう。

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