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ワーキング・プア増加阻止にはほど遠い3つの理由

2007年4月3日

(小越 洋之助=國學院大學経済学部教授)

 最低賃金法改正案が2007年3月13日、通常国会に提出された。地域別最低賃金の事実上引き上げを促すものだ。

 最賃を基にして月給を計算すると生活保護の支給額より下回る地域が存在する。この「逆転現象」の解消などを目的とする内容が改正案に盛り込まれた。

 最低賃金法は、現在、どのような問題を抱えているのか。最低賃金法に詳しい國學院大學教授の小越洋之助氏は、今回の改正案について「抜本的改革にはほど遠い」と指摘する。その理由と、氏の考える「抜本的改革」のための方策を挙げてもらった。

最低賃金(最賃)とは、企業が人を雇う場合、法律により、支払わなければならない賃金の下限のこと。日本では都道府県ごとに地域別の最賃制が設定されている。現時点(2007年度)で、時給の最高額は東京都の719円。最低は青森、岩手、秋田、沖縄で610円。加重平均で673円である。このほかに、地域ごとの基幹労働者(基幹労働に携わる労働者)に設定される「産業別最低賃金(産別最賃)」もある。これは地域最賃より平均1割以上高く、地域最賃の普及で、産別最賃は「屋上屋を重ねる」として使用者側は廃止を要求してきた。

今回の改正案での変更点はいくつかあるが()、とくに最賃額と生活保護(基準)との「整合性」が最も注目される。

注:

  1. 表示単位を時間額に一本化
  2. 地域別最賃を「国内の各地域ごとに、すべての労働者に適用される」ように義務化
  3. 最賃の決め方を「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して」決定
  4. 地域における労働者の生計費については「生活保護との整合性も考慮する必要性がある」ことの明確化
  5. 現行制度にある適用除外制度をなくして「減額措置」を導入(例えば障害で著しく労働能力の低い者、試用期間の者など)
  6. 地域別最賃の違反の使用者への罰則の強化(現行2万円以下から50万円以下への引き上げ)
  7. 産業別最賃の罰則をなくし、「特定最低賃金」に変更(産別最賃廃止ではなく、それを残すが、罰則をやめたこと)
  8. 労働協約拡張方式(現行法11条)の廃止
  9. 派遣労働者に適用される最賃を「派遣元」の事業場への適用(現行)から「派遣先」事業場へと見直し。

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