国際化への足がかりは、“アジアシリーズ”の強化から
(小林 至=江戸川大学社会学部教授)
今後のプロ野球の生きる道は、現状を追認するのか、それとも現状に抵抗するのか、ということになる。
前者の「追認」とは、要するに大リーグの「下部組織」としてのポジションを受け入れること。実際、そうすべきだという意見が球界にも少なからずある。プライドさえぐっと飲み込んでしまえば、下部組織だからということで、選手の年俸を今の3分の1程度の水準にできる。そうなれば、全チームが黒字になる。立て直すのはそこからでいいではないかという、要はリストラ論である。
臥薪嘗胆(がしんしょうたん)と言えばそのとおりで、一般的な経営ならば正論とも言える。
しかし、既に述べてきたように、プロ野球は「ブランド商売」であり、ピカピカ輝くオーラがビジネスの根源である。こうした商品はひとたび二流であることを認めてしまえば、価値はどこまでも落ちる。ちょうど、スーパーで売っている財布の質がいくら良くても、その価格は、質も使い勝手も劣る海外ブランドのそれの10分の1にも満たないことと同じことだ。
もう1つの選択肢は、現状に「抵抗」する、つまり現状を打破して、より魅力ある日本のプロ野球にすることだ。つまり、「一流」を取り戻すことだ。とは言っても、選手の国外流出をやめさせるというような後ろ向きの施策ではない。第1回でも指摘したように、「一流」を取り戻すということは、要するに、日本はじめ世界中の選手に、日本のプロ野球でプレーしたいと思わせる環境を整備することだ。それにはまず収益力を上げなくてはならない。斜陽といわれて久しいプロ野球だが、一方で、眠っている収益機会はやりかたによってはまだまだある。
ファンに向き合うサービスの開拓と普及活動から始める
例えば第3回で記したように、球場運営に関して、自治体との関係を見直すだけでも違ってくる。
既存顧客との関係の構築もこれまで希薄だった。プロ野球には年間2000万人近くが来場するほか、少なからぬ興味を持っている人は多数いる。こうした人々から属性を取り、その属性に合わせた提案型営業をする仕組みを構築すれば、だいぶ変わってくるはずだ。実際、大リーグは、この10年で、平均チケット価格を3倍以上に引き上げ、なおかつ入場者も50%近く伸ばしている。これは、ファンに球場へたびたび足を運んでもらう工夫をしたり、ITを駆使したCRM(顧客情報管理、Customer Relationship Management)の普及により、提案型営業の仕組みを確立したことが、その源泉となったのである。日本においても、楽天やソフトバンクなど、その道に明るい会社が参入して3年目を迎える来季は、いよいよそうした動きが本格化するというから期待が持てる。
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