課金視聴スタイルでサッカーが崩壊を免れた英国
なんだ、それって米国の特殊事情ではないのかと言うなかれ。日本よりもはるかにテレビに対して保守的な欧州でも、この課金方式のテレビ視聴がスポーツ団体を救ったのである。欧州でもっとも人気のあるスポーツ=サッカーだ。
時は1990年代初頭。メディア王ルパート・マードックは、度重なる暴動などで崩壊寸前となっていたイングランドのサッカー・リーグから有力チームを引き抜き、プレミアリーグを創設させ、その試合中継を自身が率いる有料衛星放送BスカイBで独占放送したのだ。
その結果、当時、普及に苦しんでいたBスカイBは、視聴世帯を一気に3倍にすることに成功した。その後も順調に視聴世帯を伸ばし、いまや課金放送は欧州全土に広がり、文化として完全に定着した。
そして、トップリーグの「崩壊」からスタートしたプレミアリーグは、年間放送権料の収入だけでも邦貨にして720億円、総売上は3000億円に届こうかという、世界一のサッカー・リーグに成長したのである。
「大衆の心をつかむのは日々のニュースや映画ではなく、ライブのスポーツである。有料放送の加入者を増やすには、その国に合ったスポーツ・コンテンツを提供することがいちばんの近道である」とはマードック氏の有名なセリフである。
ひるがえって、日本のテレビ市場環境ほど、無料放送が充実し、公共放送が大きな売り上げとチカラをもっている先進国は他にはない。そのような中、日本は世界一のブロードバンド大国になった。古今東西の文化のいいとこ取りは日本の十八番(おはこ)である。地上波だけに頼らない、新たな放送インフラの構築と、それと一体化した新たな課金ビジネスモデルの構築は不可能ではないはずだ。
次回は、「組織・運営」の観点からプロ野球が学べることを考えます。12月14日(木)掲載の予定です。
■小林 至氏の主な歩み
1968年 東京都生まれ
1991年 千葉ロッテマリーンズ入団。東大出身のプロ野球選手(史上3人目)として話題を呼ぶも、一軍にはあがれず、3年間の短いプロ生活を終える。野球で食べるのはやっぱり無理だと悟り、勉強しなおそうと渡米。日本で伝え聞いていたのと随分違うアメリカに幻滅しながらも、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)を取得し、フロリダで会社勤めをするなど7年間在住
2001年 江戸川大学で教鞭をとる。幅広い評論活動をしつつ、経済、特にスポーツビジネスの研究にいそしみ現在に至る
2005年 福岡ソフトバンクホークス取締役を兼任
(全 3 ページ中 3 ページ目を表示)
あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください
この連載のバックナンバー バックナンバー一覧へ 画面先頭に戻る
- 国際化への足がかりは、“アジアシリーズ”の強化から (2006/12/21)
- 街のシンボルとなる「われらが球場」を作れないか? (2006/12/14)
- 無料のテレビ放送に頼るモデルは立ちゆかない (2006/12/08)
- “メジャーのファーム化”避けるヒントは敵にあり (2006/12/01)

