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無料のテレビ放送に頼るモデルは立ちゆかない

2006年12月8日

(小林 至=江戸川大学社会学部教授)

視聴率20%が異常だった。現実を見据えた方策を考えるべき

巨人戦の平均視聴率が、今年ついに、1桁台に突入した。

さして遠くない昔、巨人戦は、黙っていても視聴率20%がついてくる超優良コンテンツだったことを思うと時代が流れる早さに呆然(ぼうぜん)とする。なにせ、その放送権を巡っては、激しい争奪戦が繰り広げられ、取り損なった局のプロデューサーが左遷されるなどざらという、テレビ局の浮沈をも左右するキラー・コンテンツだった。それがいまや、巨人の主催試合のほとんどを中継していることが日本テレビの足枷になっているというのだから。

ただ、これをもってプロ野球人気をうんぬんするのはいささか早計である。これだけ娯楽の溢れた世の中だ。そこへもってきて1日あたり、1人が持つ余暇時間はおよそ4時間だけという、忙しい世の中である。2006年の巨人戦144試合のうち1試合分、つまり、たかが144分の1にしか過ぎないプロ野球のレギュラー・シーズンのテレビ中継を、しかも毎回、同じ球団の試合を、ゴールデンタイムにいわば国民の2割が忙しい時間を割いて視聴するということ自体が、そもそも不自然である。換言するならば、紅白歌合戦の視聴率が今後80%に達することは決してないのと同じなのだ。要は、過去の成功体験にとらわれず、現実の市場を見据えたうえで、どうするかということだ。

米国の地上波野球放送の視聴率は「日本以下」

実は、米国でも同じような現象は随分前から起きている。たとえばMLB(米大リーグ機構)の地上波全国中継権を持っているFOXは、視聴率が取れない(1%台)ために、めったなことでは試合を放送しない。

それでもなお、FOXがレギュラー・シーズンの放送権を保有しているのは、オールスター、プレーオフそしてワールドシリーズの放送権がパッケージに含まれているからである。レギュラー・シーズンの放送権は要するに、おまけなのである。もっとも、そのパッケージの根幹であるワールドシリーズも、視聴率は10%前後の数字しか上げられないのが実情だ。

こうしてみると、MLBの経済状況は悪いように思われるかもしれない。なにせ、現代スポーツ・ビジネスの根幹であるテレビ放送で、日本以上に視聴率が低い。しかもレギュラー・シーズンの地上波全国中継はほぼ姿を消しているのだから。しかしそうではない。前回記したとおり、MLBの売上総額は年々伸び続けており、今年ついに6000億円に届いた。そのうち「テレビ・マネー」は1500億円にもなっている。それに対して、日本のプロ野球の総売上は1000億円。そのうちテレビ・マネーは、推定値だが、どう高めに見積もっても200億円いかない。

彼我の、このテレビ・マネーの違いは、どこからくるのか。それはテレビ市場の規模の違いである。ざっといって、日本の民間放送の市場規模は3兆円に満たない一方、米国は邦貨にして13兆円を超える。その差4倍以上である。

なぜか。1つは、テレビ・マネーの源泉といえる広告宣伝費の規模の違いにある。米国は宣伝広告費のGDPに占める割合が3%を超える一方、日本は1%に過ぎない。この差はいかんともしがたい。米国の国土は日本の25倍の面積である。いきおい、広告宣伝費の大半はテレビCMに投じられる。大統領選挙ともなると、民主共和両陣営併せて、400億円以上がテレビCMに注ぎ込まれる、空中戦の国である。口コミや風評が実は重要な日本とは環境が違う。

もう1つは、視聴形態の違いにある。実は、ここに日本プロ野球の収益改善のヒントが隠されていると私は思っている。

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