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頼れるアンテナ

「ブログの読者の中には、私の書評を頼りに本を買ってくれる人が一定割合いると思います。中には書評を書く前の予告の段階で、本が売れることもあります」と、smooth氏。おそらくsmooth氏のブログから情報を得て本を買う人は、smooth氏の選別眼や感性を信頼しているのであろう。

われわれは中身をすべて点検してから本を買うことはできない。仮に2000円の本を買い、2時間かけてそれを読むとき、われわれは「2000円+2時間」相当の投資をしているに等しい。「この本はよかった」という形で、その投資が報われることはもちろんある。だが、「2000円損した」とか「2時間を返してほしい」という気分になることも少なくない。だからわれわれは、リスクヘッジの手段として書評を活用している面がある。「この人が推薦するのならよい本なのだろう」と。従来、いわゆる“エライ先生”の書評が主流であったのも、このようなニーズに応えるためだ。

だが、われわれが本に求める価値は人それぞれである。感性や価値観が合わなければ、“エライ先生”が高く評価してものでも、「期待したほどでもなかった」ということになってしまう。それに“エライ先生”の書評というものは、おおかた著者や出版社に頼まれて書くものであり、セルサイド(売り手)情報の範囲を出ないのである。だから賢い消費者は、自分と価値観や感性が合うブロガーを探し、その書評を頼りにする。さしずめ「マインドマップ的読書感想文」は、頼れるアンテナなのだ。

「私は読者の立場、中立の立場で書評を書くように努めています。だから出版社からの献本も、極力受け取らないようにしています」と、smooth氏。本の達人の立ち振る舞いは、どこまでもストイックだ。

複線的な生き方

「アフィリエイトを仕事と考えたら、まったく見合わないですね。ブログからの収入は微々たるものですが、ブログには別の魅力があります。普通は知り合えないいろいろな人と、つながりが持てるところが面白いですね」と、smooth氏は語る。ブログには、普通の仕事では味わえない独特の“醍醐味”があるようだ。「毎日数百人のユーザーが『マインドマップ的読書感想文』を読んでくれています。ブログには読者からのフィードバックを受け取る機能もあるので、自分が世の中の動きに参加しているという手ごたえがあります」とsmooth氏。smooth氏にとってのブログは、世界とつながる窓なのかもしれない。

smooth氏から、ユニークな名刺を頂いた。表面は税理士事務所の名刺になっている。白地に文字を印刷しただけのコンサバティブな名刺だ。裏面はブロガーとしての名刺であり、黒地に白文字のクールなデザインになっている。smooth氏は税理士としての生活と、ブロガーとしての生活を明確に区分しているが、それは彼の名刺のように表裏一体の関係でもある。税理士としての生活とブロガーとしての生活は、交わらない二本の線のよう存在するが、どこかで共鳴しあっている。それがsmooth氏の人となりに、独特の深みを与えているように感じた。

桐原 涼(きりはら・りょう)

株式会社セレンディップ・ラボ シニアディレクター

経営コンサルタントとしての業務の傍ら、ネットメディアにて辛口の経営批評を展開している。ブログ「Critical eye for business —経営の視点/投資の視点—」を公開中。

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