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しかし、日本の教育行政は、レッテル付きの「追加教育」をたいした予算もつけず、教員を増やすこともなく現場に下ろし続けてきた。

環境問題が大事だと言えば「環境教育」を充実せよという指示が上から降りてくる。IT化に乗り遅れるなという社会的な要請が高まれば「IT教育」が追加される。昨今の若者には思いやりが足りないじゃないかという指摘があると「福祉ボランティア教育」がメニューに加わる。国際化時代と言えば英語が小学校の授業にも下りてきて「国際理解教育」が叫ばれる。少年事件が起これば「こころの教育」が、小学生がウサギを死なせたと言えば「いのちの教育」が、ニートが増えたと言っては「キャリア教育」が、経済感覚やベンチャースピリットが不足しているという指摘があれば「起業家教育」や「金銭教育」が降ってくる。

日本の教育現場で、いったい何人の教員が、数学を教え、バスケット部の指導をし、2年D組を担任したままで、「環境教育」と「IT教育」と「福祉ボランティア教育」と「国際理解教育」と「こころの教育」と「いのちの教育」と「キャリア教育」・・・を教えられるだろうか。追加教育が、授業にかかわる教務だけでなく、関連の事務作業量をも増やすことは自明だろう。

2007年からは「特別支援教育」が始まり、全体の6%以上と言われる軽度の障害のある子との本格的な融合教育も始まる。例によって、追加の人員配置はない。

教員の仕事は本来、生徒に向かってなされるべきである。目の前の児童・生徒が、できないことをできるように、分からないことを分かるようにすること。豊かな世界観を育み、柔らかな人生観が持てるよう指導すること。そのことに全力を尽くしてほしいのが、教員に対する親の願いであるはずだ。

教員が余計なことで忙しくなり子ども達に向き合う時間が減れば、集団生活では自然に起きるイジメやちょっとした事件に対して、それを発見し、適切に処置することに隙ができても不思議はないだろう。

人数が増えない前提ならば、もう一度教員が子ども達に寄り添う時間が増えるように、余計な仕事を大幅に削減するためのシステム上の大改革が必要なのである。

次回は、「教育委員会」を取り上げます。12月6日(水)に公開する予定です。

藤原 和博(ふじはら・かずひろ)

1955年生まれ。1978年東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。1996年から同社フェロー。ビジネスマンのまま小中学校での教育改革にかかわる。

2003年4月から杉並区立和田中学校校長に、都内では義務教育初の民間人校長として就任。

全著作並びに活動の紹介は著者の「よのなかnet」に詳しい。

「処生術〜生きるチカラが深まる本」(新潮社)、『人生の教科書[よのなか]』(共著、筑摩書房)、『世界でいちばん受けたい授業』(小学館)、『公教育の未来』(ベネッセ)など多数。近著は『「ビミョーな未来」をどう生きるか』(ちくまプリマー新書)。

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