古い信頼性基準が生む日本の宇宙開発の高コスト構造
日本の宇宙開発予算には大きな構造的ひずみが蓄積していることを第3回で説明した。しかし、それでは単に予算を増やせば事態が改善するかと言えばそう単純ではない。宇宙開発の現場にも問題はある。「宇宙用」と称される電子部品の問題だ。
電子部品はこの40年ほどで長足の進歩を遂げた。トランジスタはICとなり、さらに集積度が上がってLSIへと進歩した。1970年に開発された世界初のCPU「4004」はチップ上に2300個のトランジスタを集積して、クロック周波数108KHzで動作していた。一方、現在のパソコンに使用されているCPU「ペンティアム4」は4200万個のトランジスタから成り、3GHz以上のクロック周波数で動作する。
ところが宇宙用電子部品は、「信頼性第一」を名目に30年以上昔のものが使われている。そんな部品は量産されていないし、特別の検査過程を経るので非常に高価だ。
信頼性第一の裏には、1960年代後半に米国から導入された信頼性管理の基準を今なおそのまま使っているという事情が存在する。宇宙開発の現場は、信頼性第一といういいつつ、信頼性の基準を技術の進歩に伴い見直すのを怠ってきた。その結果、宇宙機の電子回路は、地上の民生品と比べて信じられないほど性能が低く、価格が高いという状況になってしまっている。
この高コスト体質を是正すれば、同一の予算額でもより多くのミッションを実施できるようになる。予算増額と業界体質の改善という両輪を同時に回してこそ、今後の展望が開けるはずだ。
米国から導入した信頼性基準を40年近く使い続ける
宇宙機のための電子部品は、高い信頼性と、宇宙放射線にも耐える耐放射線特性が要求される。このため、特別の基準を設けて宇宙機に使用する前に、徹底した地上試験を行い、実際に宇宙空間で使えることを確かめる。また、製造工程でも、信頼性確保のために特別の検査を実施する。
このため、宇宙用電子部品は高価だ。秋葉原なら同じ性能の半導体が一個数百円で買えるのに、宇宙用となっただけで100万円を超えるということもざらだ。
しかし、JAXAが使用している高信頼性部品の基準は40年近く昔の1960年代後半に米国から導入されたものから大きくは変わっていない。このため最新の電子部品の実態とは合わなくなっている。
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