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野村は営業基盤を買った、三菱UFJは・・・

野村はリーマンのアジア、ヨーロッパを丸ごと買収するわけではない。必要な業務だけに絞り込み、将来的な損失が拡大する恐れのある資産は一切引き継がない。さらに「リーマン・ブラザーズ」の名前も残さない。つまりアジア、ヨーロッパでの営業拡大を一気に進めるためのインフラを買ったというニュアンスが非常に強い。元リーマンの社員たちが大量に辞めないこと、彼らが高給に見合う収益を上げられるか等々、懸念材料も少なくないが、これはこれでひとつの見識といえる。成功も失敗も、今後の舵取りしだいだろう。 対照的に、いまひとつ意図を計りかねるのが三菱UFJだ。彼らはモルガン・スタンレーが再び栄光を取り戻すと信じているのだろうか。はたまたモルガン・スタンレーから投資銀行業務を学ぶつもりなのか。あるいは20%の持株比率でモルガン・スタンレーを牛耳れるとでも思っているのだろうか。疑問ばかりが浮かんでくる。

石橋を叩いていつも出遅れてきた三菱UFJの企業文化から考えると、実質的にほぼ1日で巨額出資を決めた経営行動自体は評価するものの、なんのための最大9000億円だったのか。目的がまるで見えてこない。

逆に世界最強の投資家、ウォーレン・バフェット氏がゴールドマン・サックスに5000億円出資する理由は明快だ。株価が暴落した業界最大手の株式を大量保有することが資産形成の王道だというのがバフェット氏の投資哲学だ。バフェット氏にゴールドマン・サックスから投資銀行業務を学ぼうというインセンティブがあるとはとうてい思えない。ウォーレン・バフェットは世界一の投資家だ。ゴールドマン・サックスへの出資も純投資と考えるのが自然だ。いまが株価の大底かどうかはわからないが、歴史的安値圏であること間違いない。

証券業務拡大のためのインフラとして破綻した投資銀行を買収する野村HD。

純投資のウォーレン・バフェット。

出資の意義が見出しにくい三菱UFJ。1日も早く、その目的を語って欲しい。

財部 誠一(たからべ・せいいち)

1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。1995年、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」設立。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして活躍。テレビ朝日系の『サンデープロジェクト』、BS日テレ『財部ビジネス研究所』などに出演。

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