日本のプロバイダの迷惑メール業者対策は非常に厳しい。締め出された迷惑メール業者が目を付けたのが中国なのである。日本の迷惑メール業者が中国で活動を始めたのであり、日本が中国を巻き込んでしまったという構図だ。
最近の日本語で書かれた迷惑メールには、このような背景がある。したがって、迷惑メールに関して、中国や韓国、台湾などの国が悪いという一方的な論調は失礼なことである。さらには、逆の現象が起こっているかもしれないのだ。中国や韓国、台湾に届く迷惑メールの送信地が日本という可能性である。
日本の迷惑メール業者が中国に設置したパソコンを操って迷惑メールを送信する場合、まず、迷惑メールの本文と宛先のメールアドレス一覧を、中国のパソコンに日本から送る。ここでの、日本→中国への通信量はたいしたことはない。しかし、中国にあるパソコンが迷惑メールを送信すると、通信量は「メール本文のサイズ×宛先の件数」に膨らむ。タクミ通信のケースでは、中国→日本の通信量は膨大になり、中国→日本のネット回線がふさがったであろう。日中の両方の国に迷惑をかけたのは確実である。
数字で見ると、迷惑メールの悪者ぶりが分かる
迷惑メール業者による迷惑度を量的に試算してみよう。
まず基礎データとして、日本のインターネットの通信量は平均524Gbps(ギガビット/秒)である。総務省が定期的に通信量を推計しており、2006年5月時点の日本のブロードバンド契約者の通信の総量を推定した値である(総務省の発表)。
「タクミ通信」は2カ月間で54億通を送信した。これは、日本の人口1億2776万人に42回以上まんべんなく送信できる数だ。世界の人口は約66億人なので、75日間で全員にメールを送ることができる能力を持つ設備を持っていたことになる。
迷惑メールのサイズを、1メール当たり10Kバイトと仮定すると、迷惑メールのデータの量は、1日平均で約885Gバイトになる。迷惑メール送信業者が送ったメールは、プロバイダがいったん預かる。その後に、契約者がプロバイダからメールを受信する。したがってメールは、データのサイズの2倍の転送量が発生する。この業者は、毎日のように約1770Gバイトのデータのやり取りを、国内のインターネットに引き起こしたことになる(最悪の場合を想定して計算した。同報で送信した場合は、メール本文のデータがダブらない。プロバイダの迷惑メールフィルタが自動的に遮断したメールはインターネットに流れない。これらの理由で、実際の転送量は計算値未満だったかもしれない)。
迷惑メール業者が1000社で、ネット転送量の30%を占める
1770Gバイト/日を、1日24時間に平均的に流したと仮定すると、0.164Gbpsになる。これは、日本のインターネット通信量524Gbpsの0.03%に相当する。たいしたことはないと思うかもしれないが、1社の迷惑メール業者だけでこれほどの転送を行った点に注目しないといけない。
こうした迷惑メール業者が1000社あった場合、インターネットの通信量の30%は迷惑メール業者が占めていることになる。規模はさまざまだが、日本の迷惑メール業者の数が1000社ではすまないことは確実である。
映像コンテンツを試聴するインターネットユーザーや、WinnyなどのP2Pでファイル交換を行うユーザーが増え、インターネットの帯域が圧迫されていることが話題になった(関連記事)。それらに匹敵する帯域が迷惑メールに食われていることになる。
「億」の単位の計算をすることが滅多にない筆者は、自分の試算にいささか自信がない。計算時にけたを誤って、迷惑メールの通信量を多く見積もったのではないかと疑ってしまった。
迷惑メールがなくなれば、これだけのインターネットの帯域が空くのである。迷惑メールは、やっぱり「悪」である。
試算
1日あたりの送信件数
54億通/2カ月=5,400,000,000/61日≒8852万通/日
1日あたりの通信量
10KB×8852万通=885.2GB/日 885.2GB×2≒1770GB/日
1秒あたりの通信量
1770Gバイト/日=1770×8bit/24時/3600秒≒0.164Gbps
通信総量に占める割合
0.164Gbps/524Gbps≒0.000313=0.0313%
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