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野中郁次郎さんに聞く:優秀なリーダーは会議で“場”をつくり、結論に導く

2007年1月25日

(聞き手:諏訪 弘=フリーライター)

ビジネス界においては、昨今ますますコミュニケーション力が重要視されている。プロフェッショナルに求められるコミュニケーション力とはどのようなものか。どうしたら身につけられるのか。「知識経営」のセオリーを確立したことで世界に知られる、一橋大学名誉教授・野中郁次郎氏に伺った。

野中郁次郎

1935年生。早稲田大学政治経済学部卒業。カルフォルニア大学バークレー校経営大学院博士課程修了。南山大学経営学部教授、防衛大学校教授を経て、現在は一橋大学大学院国際企業戦略研究課客員教授を併任。提唱する「知識経営論」は米国でも驚きをもって受け入れられた。著書に『イノベーションの本質』(小社刊)など。

優秀な経営者は、そろってコミュニケーション力に長けた「人たらし」

組織のコミュニケーション不全に悩んでいる経営者や管理職が多くいます。どうしたらコミュニケーション力を向上させることができるでしょうか。

野中 「コミュニケーション力」とは、「場づくりの能力」だと私は考えています。その場の空気を敏感に読み、ジョークを多用して場をなごませ、人心を掌握する。

「場づくりの名人」といってすぐに思い出すのは、「世界のホンダ」の本田宗一郎氏。彼のジョークはほとんど猥談だったそうですが、それはきちんと空気を読んだ上でのものだった。だから不快感を持たれることもなく、むしろ親近感を増すのに一役買っていた。

経団連会長の御手洗冨士夫(キヤノン会長)氏もそう。あんなに話の面白い人はいません。名だたる経営者は一様に場づくりの能力に長けている。俗に言えば「人たらし」です。

もちろん本田氏にしても御手洗氏にしても突出した才能の持ち主です。普通の人は彼らと同等の資質を身につけることはできない。だからそのレベルを目指す必要はない。ただし、平均レベルのコミュニケーション力は持っておきたい。

どうすればいいか?

こればかりは本を読んで勉強しても駄目で、実地で身につけていくしかない。端的に言えば、コミュニケーション力に優れた先輩や上司を見習って、OJT的に学んでいく。どんな人でも尊敬する上司はいるでしょう。素直に彼のまねをしていけばいい。

実際、生産性の高い会議の模様を見ると、やはりリーダー格の人に高いコミュニケーション力が備わっているものです。「会話の妙を心得ている」というのでしょうか、フォーマルな話とカジュアルな雑談を巧妙に使い分けることで、あらかじめ想定してあったシナリオに場の流れを沿わせることができる。そして目指す結論にソフトランディングさせる…。

そういう力を持った人材をどれだけ抱えているかが、企業の将来を左右するのではないでしょうか。コミュニケーション力の低い、人間的に魅力のない人を周囲がコミットするはずはありません。そして、周囲のコミットなくしてはミッションを完遂することもできません。

「人間的な魅力」は、言葉にするのが難しい暗黙知*1ですね。

野中 そうです。だから「優れた先輩や上司を見習う」とは、「手本」を通じて暗黙知を共有することに他ならない。暗黙知を共有するためには、経験を共有する以外にない。だから、例えばセミナーなどを開いてどうなるというものではありません。経験とは、言葉にするのが困難なもの、五感を総動員して感じ取るものです。これに対して、セミナーの中心となるのは言葉、すなわち形式知*2=論理だからです。

「形式知と暗黙知がダイナミックに連動するところに、日本企業ならではの特性・強みがある」というのが私の持論です。しかし、ことコミュニケーション力とか人間的魅力といったことは、ひとえに暗黙知に属する問題です。

*1 暗黙知:言語・文章で表現するのが難しい主観的・身体的な知

*2 形式知:言語・文章で表現できる客観的・理性的な知

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