時代はMBAより「大家族主義」だ〜大学の授業風景をヒントに考える〜感性を高める組織(5)
過去4回にわたり、個人の感性が最大限に高まる組織のあり方について考えてきた。このシリーズの最後として、私が大学で実践している方法を紹介したい。もちろん大学と会社組織とでは目的も環境も大きく違うが、個々人の感性を磨くことの重要性は変わらない。状況に合わせて、これをアレンジして、活用していただきたい。
たった1枚の紙片から
私が大学の教壇に立つようになって、かれこれ20年が経つ。常にいろいろな工夫をして、学生たちを驚かせたり困惑させたりしてきたが、「もっと精度を上げたい」というのが永遠のテーマである。
そこである時期から、授業開始と同時に出席票を配ることにした。これ自体は珍しくないが、その裏に授業へのコメントも書いてもらうよう注文した。概して日本人は、相手に面と向かってモノを言うのが得意ではない。周囲に他の人がいればなおさらだ。しかし出席票に書く程度なら、本音を聞かせてくれるだろうと考えたのである。
この狙いは、予想以上の効果をもたらした。例えば以前、いきなり「今日の授業は英語でディスカッションをやる!」と宣言したときのこと。彼らは当然のごとく、「えーっ?」「マジかよ」と非難轟々だ。しかし出席票では、「意外と楽しかった」といった肯定的なコメントが圧倒的に多かった。おかげで、学生たちの「えーっ?」など気にすることはない、との確信を得るに至ったのである。
それだけではない。「次はこんな授業をやってほしい」というリクエストや、授業の中身について「先生はこう話していたが、私はこう思う」という意見も寄せられた。それに対して、私はリクエストに応えることもあれば、次回の授業の冒頭にいくつかのコメントを紹介することもある。これは、「すべての出席票に目を通している」という私からのメッセージでもある。
すると学生たちも、感性を全開にして授業に集中し、気づいたことを熱心に書き込むようになった。自分でいろいろ調べたり、アイデアを披瀝する者もいた。それをまた授業で紹介すると、彼らはますます熱心になる。たった1枚の紙片のやりとりから、これだけの好循環が生まれたのである。
これは同時に、教室全体に一体感を醸成した。学生の中に、ともにいい授業をつくろうという参加意識、その教室の一員であるという当事者意識が芽生えたのである。より精度の高い授業が実現できたことは、言うまでもない。
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