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リーダーは出すぎず、埋没せず 「アンテナ3本!」の“触媒”であれ〜感性を高める組織(3)

2008年9月5日

思想史家・藤田省三氏の著書に、『全体主義の時代経験』(みすず書房)というものがある。ややいかめしいタイトルだが、その中に「石母田先生のこと」という洒脱なエッセイが収録されている。

藤田氏が教鞭を執られていた法政大学法学部では、教授会の際、長らく以下のような習慣が存在していた。

〈学部長先生は胸を反るようにしながら威風堂々と入場して来られるのであり、学部長の坐る座席は、一番奥の中央に陣取って全員を見渡しながら「統括」する「主席」の位置に決まっていた。重々しく議事を司る仕方もおのずから想像できるであろう。〉

「組織の更新性」が企業の生死を分ける

しかしあるとき、そんな法学部の学部長に、日本を代表する歴史学者である石母田正先生が就任する。その第一回の教授会の描写が、じつにおもしろい。

〈石母田先生は小柄な体を幾らか猫背にしながら、靴音も立てないでスーッと会議室に入って来るなり、奥の中央などには見向きもしないで、黙って、私たち有象無象が並んで坐る椅子の群れの中程の一つにちょこんと腰を下ろしたのである。(略)その瞬間に、「宮中席次」と「御前会議」をモデルにして出来ていたであろう帝国大学教授会風の会議様式は、同輩が相集まって共通の問題を討議し会う「円卓会議」の様式へと、物音一つ立てないで転換したのだ。〉

中央集権型の組織より、分散型の組織のほうが強い。上司の命令がなければ動けない組織より、個々人が自主的に動ける組織のほうが、社会の変化に柔軟に対応できる感性を身につけやすい。前回まで、その実例をいくつか紹介してきた。

むしろ、個々人はそれぞれ高める余地のある感性を持っているにもかかわらず、組織によって抑圧されている場合も少なくない。それは個々人にとっても、組織全体の力という意味でも損である。

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