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組織に依存しない集団は強い

では今の会社はどうか。概してクモ型組織が多い中で、異彩を放っているように見えるのがリクルートだ。

周知のとおり、同社は江副浩正氏によって、学生サークルの延長のような感覚で起業された。そのワイルドで自由闊達な雰囲気が、80年代の急成長を支えたといえるだろう。いわゆるリクルート事件で一時は停滞したものの、その異彩ぶりは今なお健在だ。

同社の元社員の方から聞いた話によると、社内では部署と関係なく、各所で日常的かつ勝手にブレーンストーミングが開かれていたという。そこで出たアイデアを部署に持ち帰り、ふたたび勝手にディスカッションして具体的な企画にまとめていく。その企画が通れば、もちろん言い出した者がプロジェクトリーダーになって責任を負う。

したがって、ベテランも新人も関係ない。感性を磨いた者が勝つ。それは、多くのクモ型組織にありがちな、余計な抑圧がないということでもある。各種の雑誌に象徴される斬新な事業が次々と立ち上がっていくのは、そのためだろう。

また同社は、数多くの起業家を輩出していることでも有名だ。あるいは他の企業や学校に請われて移籍する者も少なくない。それは、各人が同社の“Meme(文化的遺伝子)”のようなものを受け継いでいるからだ。

アイデアさえあれば突出できる環境で揉まれた者は、組織に依存する必要がない。だからある者は独立起業するし、またある者は別の組織に“Meme”を移植する。その姿は、割られた数だけ新しい個体が生まれるヒトデそのものである。

齋藤 孝(さいとう・たかし)

1960年、静岡生まれ。明治大学文学部教授。

東京大学法学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程等を経て現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。

2001年に上梓した『声に出して読みたい日本語』(草思社・毎日出版文化賞特別賞受賞)で日本語ブームの火付け役に。著書に、『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス・新潮学芸賞受賞)、『コミュニケーション力』(岩波新書)など多数。

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