「決断できない、いい人たち」経営の功罪〜冨山 和彦 産業再生機構 元代表取締役専務兼COOに聞く(1)
(聞き手:荒川 龍=ルポライター)
産業再生機構(以下、同機構)は4年間の活動を終えて、2007年3月に解散した。同機構は、日本政府が100%出資する株式会社として誕生。政府の10兆円の資金保証を背景に、民間から資金を調達するという日本初のユニークな取り組みとして注目を集めた。いわば、「日本政府版企業再生ファンド」で、代表取締役専務兼COOとして陣頭指揮に立ったのが冨山和彦氏(45歳)だ。ダイエーやカネボウなどの大企業から地方企業まで、債務総額約4兆円の合計41企業の再生支援を手がけ、取得した株式の売却益で約400億円の利益を計上。それらは国庫に納入されるという。
冨山氏は、同機構解散後の4月に、経営共創基盤という人材投入型の企業再生会社を新たに設立したばかり。企業再生の4年間を振り返って「(問題の根本は)『決断できない、いい人たち』経営が招いた必然でもあった」と話す。その言葉の真意と、企業再生を通して見えてきた課題について、冨山氏に話を聞いた。
大企業と地方企業の両方に「決断できない、いい人たち」経営者が増える背景
■まず、「決断できない、いい人たち」経営における、「いい人」の定義についてうかがいたいのですが。

産業再生機構 元代表取締役専務兼COO 冨山 和彦氏
今年4月に経営共創基盤を設立した
冨山 日本企業の場合、同期入社の人たちが順ぐりで、かつ同じようなペースで課長、部長、そして取締役へと昇進していく。ある意味、ゲマインシャフト(共同体)的なムラ社会ですよね。そこで残り、なおかつ昇進していく人は、みんな物分りがよくて協調性も高い。良くも悪くも常識人で、一般的に言えば「いい人」なんです。みんな仲がいいし、周りのことも思いやる。高学歴で、そんなに人生も荒れていないエリートたち、という意味です。
しかし、企業経営というのは、事業の統廃合など時には戦略的に非情な決断をしなければいけない場面もある。そんな状況でも、経営者が「いい人」であり続けようとすれば、自然と問題は先送りされてしまいます。やがてそれが経営全体を圧迫するような問題になり、さらには経営危機にまで追い込まれてしまうこともある。企業再生にかかわってみて、そこに「決断できない、いい人たち」経営の問題があるなぁと、中央と地方の別なく痛感しましたね。
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