「無名」俳優だからヒットする!
(聞き手:金田 信一郎=日経ビジネス編集)
有名俳優にベストセラーの原作本、という組み合わせがヒット映画の常道になって久しい。だが、その逆を行く男がいる。男子高校生がシンクロナイズド・スイミングに挑戦する「ウォーターボーイズ」(2001年)と、落ちこぼれ女子高校生がジャズバンドへと成長する「スウィングガールズ」(2004年)。二つのヒット映画を手掛けたフジテレビジョン映画制作部の関口大輔プロデューサーだ。「無名俳優だからこそ」できる、ヒット映画の極意を聞いた。
■ヒット映画を連発するプロデューサーに、その秘訣を聞きたいんですが。
関口 私がやっているプロデューサーの仕事って「スタッフとキャストを集めて終わり」と言われるんです。でも、ヒット作を作るにはそこが重要なんですよね。

フジテレビジョン映画制作部の関口大輔プロデューサー
■キャストで言えば、今の邦画界は、とにかく知名度の高い有名俳優を奪い合っています。
関口 そういう考え方もあるけど、僕は違うんです。無名俳優でいいと思っている。多くのプロデューサーは、「無名俳優ばかりだと、宣伝が難しい」と考えます。でも、僕は逆。無名俳優を起用するメリットはとても大きいと思っているんです。
無名だからこそ、「本物」を引き出せる

「ウォーターボーイズ」
「ウォーターボーイズ」では男子生徒がシンクロを泳ぐし、「スウィングガールズ」では女子高生がジャズを演奏します。もちろん、シンクロは大学の水泳部の選手に泳がせて、水上に出たところで役者に切り替えて撮ってもいい。ジャズだって、(音楽を)吹き替える手もあります。楽をしようと思ったら簡単です。
でも、本人たちが泳いだり、演奏しなければ、やっぱりダメなんですね。自分たちが泳ぎ切って、プールから上がってきたときの表情が、お客さんに感動を与える。ジャズの演奏もそうです。アイドルは、あの表情は絶対にできない。
■かつての黒澤映画を思い起こさせるような完璧主義ですね。
関口 本物をとことん追求すれば、本物の表情ができるわけです。
ところが、若い女の子にジャズを演奏させるには、1年ぐらいスケジュールを押さえて練習させなければならない。そんなこと、有名俳優では実現しませんから。
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