戦後、日本の商品開発は徹底的な技術先行型で行われてきた。それは技術の進化を促したけれども、一方で使いにくく、分かりにくい大量の製品群を生み出してしまった。高田がテレビやラジオで発信し続けているメッセージは、そうした文化への強烈なアンチテーゼではないか。
そんな高田の思いをさかのぼると、ある“買い物”に辿り着く。カメラ店で頑張っていた80年代、日頃あまり面倒を見られない子供達の姿を記録に残そうと、ビデオカメラを購入した。まだビデオが珍しい頃で、巨大なビデオカメラは60万円もした。夫婦は無理をして月賦で新製品を購入したのである。
だが、カメラは重くて使いづらく、子供の運動会に一度活躍したきりだった。モノへの期待と、落差。その苦い思い出が、今も高田の心の奥底にある。
恵子はこう話す。
「あの時の悔しさは、皆さんに安くいいモノを提供して、生活を豊かにしてほしいという気持ちの原点になった。分割手数料を当社負担にしたのも、あの悔しさがあったから」
高田の願望は、2004年秋に放映されたテレビCM「新しい人。ビデオカメラ篇」に、象徴的に描かれている。このCMは、高田が企画段階から全面的に関わって制作された。
——テレビ画面を見つめる男の横顔。独白が流れる。
<子供の頃の自分を見て喜ぶ男は少ない。僕は今、古いビデオの中の父の姿をじっと見ている。僕を叱る顔、僕をなだめる顔、僕を見守る目。そんな父の姿は、遠い幸せな日々に僕を連れ戻してくれる>
ビデオには、若かりし頃の父親が子供達と遊ぶ古い映像が流れている。ソファに座る男のひざには、まだ幼い息子が遊んでいる。静かな独白が続く。
<子供のために僕を撮ろう>

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