ジャパネットたかた社長 高田 明
“売る”という職人芸を社員と顧客に捧げる
ジャパネットたかた社長 高田 明。通販番組に自ら登場し、年商700億円を稼ぎ出す。だが、成り上がりの欲望は微塵も感じさせない。
誰をも惹き付ける熱のこもった語り口上は社員、そして顧客の明日のために捧げられる。

2004年の春、ジャパネットたかたは企業の根幹を揺るがされるような大事件に遭遇した。約51万人分もの顧客情報が流出し、名簿業者に売られていたのである。同社はこの事件で50日間にわたってテレビ・ラジオの通販番組を自粛し、その影響は約150億円もの減収につながった。
事件が発覚した時、社長、高田明の妻で同社の副社長も務める恵子は、激しく動揺した。
「一体、誰がこんなことしたの?」——。
だが、高田は言葉少なに、「これからどうするかを考えるのが先決だ」と語るだけだった。
3カ月後、同社の元社員2人が逮捕された。ダイレクトメールの担当だった彼らが現役社員だった頃、名簿を光磁気ディスクにコピーし、外部に持ち出していたのである。
半年後、逮捕された元社員らの公判が始まった。夫婦が「事件を見届けたい」と足を運んだ法廷で、元社員は情報流出への関与を否認した。閉廷後、報道陣に囲まれ、高田はぽつりと語った。
「本当のことを言っていないですよね……」
この事件を振り返る時、高田は今も悔しさで胸が一杯になる。そして5年前のある出来事を思い出す。
その元社員の一人が、99年に退職した時のことだ。朗らかで、笑顔を絶やさない青年だった。彼は退職に当たって、「社長にぜひ色紙を書いてほしいんです。一生の記念にします」とせがんだ。日頃はめったにサインや色紙には応じない高田だが、その時だけは自らこう書いて渡した。
「人は人のために生きてこそ人」
人のために——その言葉には、高田の人生が凝縮されている。恵子は、「これほどまでに人に裏切られたのは、私達にとって初めての経験でした」と胸の内を明かした。
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