このページの本文へ
ここから本文です

「大学生のとき、初めて行った海外がタイだった。だから、タイの街を歩いて、昔タイで思ったことと今の自分の気持ちを比べたかった。もう一度放浪したいのかどうかを考えたんだよ」

そう石川は言う。

ほんとうは、自分で自分を恐れていた。船に乗って当て所ない旅に出て、そのまま帰りたくなくなるのではないか、と。

だが結末は意外だった。

心の内を確認するように、石川は静かに語る。

「『もう放浪には興味がない』とはっきり思った。そこには自分が過去にひきずっていたものはなかった。放浪しても学ぶものはないと感じたんだよ。それよりも今の仕事が楽しい。やらなきゃいけないこと、やり残していることがいっぱいあるし、これからやることのほうがぞくぞくするって。これは大きな変化なのかもしれないね」

つまり、放浪よりも経営がおもしろくなったということか。

だが、こういう考え方もできはしないか。

石川は今も“放浪”しているのだ。彼にとって、「経営の舵を取る」ということは、何が起こるかわからない未知の土地をさまよう放浪と同義なのかもしれない。

※本文敬称略

※「石川光久、アニメビジネスを変えた男」は今回が最終回です。

<お知らせ>
「石川光久、アニメビジネスを変えた男」が「雑草魂」という本になりました。Webでは語り尽くせなかったプロダクション I.G石川光久のすべてがここに集大成。アニメビジネス業界を俯瞰する豊富な資料も満載です。ネット予約をはじめ、2月13日からは全国書店でお求めいただけます。

梶山 寿子

神戸大学文学部卒業。テレビ局勤務を経て、ニューヨーク大学大学院に留学し、メディア環境学を専攻。92年修士号取得。読売新聞米国現地版で記者として勤務した後、フリーになり、日米で取材、執筆を続ける。98年に帰国、社会・家族問題、ビジネス・トレンド、人物ノンフィクションを中心に、幅広い分野で執筆。TVコメンテイターとしても活動中。特に近年はアニメーションをはじめとするコンテンツ・ビジネスの取材に力を入れている。主著に、スタジオジブリのビジネスを追った『ジブリマジック』(講談社)、『家族が壊れてゆく』(中央公論新社)、『子どもをいじめるな』(文春新書)など。

(全 4 ページ中 4 ページ目を表示)

あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください

記事検索 オプション

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る