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鈴木プロデューサーの号令の下、こうした錚々(そうそう)たる企業の担当者が、自社の業務そっちのけで作品の宣伝のため駆けずり回った。その結果、2004年早春、街のあちこちに『イノセンス』のポスターや映像があふれた。ジャズシンガー伊藤君子が切なげに歌う『Follow Me』(主題歌)のメロディーを耳にした人も多いだろう。

もちろん、これほど大規模な宣伝キャンペーンを張るのは、I.Gにとってはじめての経験だ。

鈴木プロデューサーの力を目の当たりにした石川は、「どんなにがんばっても鈴木さんには追いつけないし、追い越せない」と感じ入るのだ。

複雑になった契約関係に手こずる

ただし、「鈴木組」と組んだことで、悩みの種も増えた。ある種の“ねじれ”が生じたのだ。

例えば、前作には原作の出版元である講談社が参加していたが、今回は徳間書店が加わっている。また、アジアを除く全世界はドリームワークスの配給なのに、日本ではドリームワークスの宿敵・ディズニー傘下のブエナビスタがビデオを販売するのだ。こんな無茶な組み合わせは通常では考えられない。

案の定、ドリームワークスには「なんでディズニーが入っているんだ!」と文句をつけられたが、石川は「アジアを除く全世界はドリームワークスだが、アジアのことには口を出さない約束だろう」と切り返し、納得してもらったという。

「とにかく、すべてありえないことだらけ。これはどういうことかというと、たぶん石川がバカだったから。普通はやらないし、やろうと思ってもできないよ」と、石川は言う。

「本当に大変だったのは契約関係」だというのは、こういう事情だったのである。

※本文敬称略

梶山 寿子

神戸大学文学部卒業。テレビ局勤務を経て、ニューヨーク大学大学院に留学し、メディア環境学を専攻。92年修士号取得。読売新聞米国現地版で記者として勤務した後、フリーになり、日米で取材、執筆を続ける。98年に帰国、社会・家族問題、ビジネス・トレンド、人物ノンフィクションを中心に、幅広い分野で執筆。TVコメンテイターとしても活動中。特に近年はアニメーションをはじめとするコンテンツ・ビジネスの取材に力を入れている。主著に、スタジオジブリのビジネスを追った『ジブリマジック』(講談社)、『家族が壊れてゆく』(中央公論新社)、『子どもをいじめるな』(文春新書)など。

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