鈴木プロデューサーの号令の下、こうした錚々(そうそう)たる企業の担当者が、自社の業務そっちのけで作品の宣伝のため駆けずり回った。その結果、2004年早春、街のあちこちに『イノセンス』のポスターや映像があふれた。ジャズシンガー伊藤君子が切なげに歌う『Follow Me』(主題歌)のメロディーを耳にした人も多いだろう。
もちろん、これほど大規模な宣伝キャンペーンを張るのは、I.Gにとってはじめての経験だ。
鈴木プロデューサーの力を目の当たりにした石川は、「どんなにがんばっても鈴木さんには追いつけないし、追い越せない」と感じ入るのだ。
複雑になった契約関係に手こずる
ただし、「鈴木組」と組んだことで、悩みの種も増えた。ある種の“ねじれ”が生じたのだ。
例えば、前作には原作の出版元である講談社が参加していたが、今回は徳間書店が加わっている。また、アジアを除く全世界はドリームワークスの配給なのに、日本ではドリームワークスの宿敵・ディズニー傘下のブエナビスタがビデオを販売するのだ。こんな無茶な組み合わせは通常では考えられない。
案の定、ドリームワークスには「なんでディズニーが入っているんだ!」と文句をつけられたが、石川は「アジアを除く全世界はドリームワークスだが、アジアのことには口を出さない約束だろう」と切り返し、納得してもらったという。
「とにかく、すべてありえないことだらけ。これはどういうことかというと、たぶん石川がバカだったから。普通はやらないし、やろうと思ってもできないよ」と、石川は言う。
「本当に大変だったのは契約関係」だというのは、こういう事情だったのである。
※本文敬称略
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