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その場に同席していた押井監督はこう語る。

「ドリームワークスの社長や副社長に対して、普通は言わないような、それを言っちゃうとこの話がなくなるようなことを、石川は平気で言うんだよ(笑)。ややこしい内容になると通訳が入るんだけど、ときどき通訳担当のスタッフがびびってさぁ、訳さないんだよね。『それ、ほんとに今、言うんですか? 私、怖くて言えません』って。でも『言え!』と。聞いた相手は驚いて、『oh my god!』となる。で、コイツほんとに本気なのかと、石川の顔を見る。あっはははは」

もちろん、押井監督はそんな石川の型破りの交渉術をちゃんと評価しているのだ。

「押しまくるだけじゃなくて、何かなごむんだよね。あいつの態度には、ビジネス特有のえぐさとかハングリーさが全然感じられない…冗談言ってるのかな、みたいな感じで、緊張感をかもし出さないから。その結果、契約内容はI.Gに有利なものになっているんだよ」

交渉の基本「口説きは感性」

好条件での契約を決めた石川だが、本人は淡々としたもの。

「ハリウッドでは契約がすごく厳しいと聞いていたけど、やってみたら意外にそうでもなくて。結局、やっぱり人だよね。交渉の段階で、『要求をきいてやろう』と、どれだけ相手に思わせるかが重要。専門的な法務知識が必要になるのはそのあとだから」

石川によれば、「口説きは感性」なのだという。瞳の輝きを見て、相手の心情をさぐりつつ、自分の言葉をぶつける。多少論理がつながらなくても、五感に訴えることが重要ということか。

「うちの会社にも、人に頼みごとをするときに、Eメールを出しただけで『伝えておきました』って言う社員がいるんだよ。すごく優秀なやつなんだけど、それじゃあダメ。こういう人間がビジネスの交渉をしても、うまくいきっこない。やっぱり気持ちで攻めて、急所をガッと押さえないと」

それが石川の持論である。デジタルな世の中だからこそ、このアナログさが武器になるのである。

※本文敬称略

梶山 寿子

神戸大学文学部卒業。テレビ局勤務を経て、ニューヨーク大学大学院に留学し、メディア環境学を専攻。92年修士号取得。読売新聞米国現地版で記者として勤務した後、フリーになり、日米で取材、執筆を続ける。98年に帰国、社会・家族問題、ビジネス・トレンド、人物ノンフィクションを中心に、幅広い分野で執筆。TVコメンテイターとしても活動中。特に近年はアニメーションをはじめとするコンテンツ・ビジネスの取材に力を入れている。主著に、スタジオジブリのビジネスを追った『ジブリマジック』(講談社)、『家族が壊れてゆく』(中央公論新社)、『子どもをいじめるな』(文春新書)など。

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