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日本ではさほどヒットしなかった『攻殻機動隊』も、アメリカでの人気は高く、96年にはビルボード誌のセルビデオ・チャートで1位を獲得したほど。押井監督のつむぎ出す卓越した映像美と世界観は、ジェームズ・キャメロン(『タイタニック』の監督)やウォシャウスキー兄弟(『マトリックス』の監督)はじめ、ハリウッドにも信奉者が多い。

そこで、タランティーノ監督たっての希望で『キル・ビル』のアニメ制作をI.Gに依頼したというわけだ。直談判のため、東京・国分寺にある同社を自らアポなしで訪れた話は今や伝説と化している。

そんな経緯もあったせいだろうか。『キル・ビル』では、主なキャスト、スタッフの名前しか出ないオープニング・クレジットに「Production I.G」の名前が入っている。アニメ・パートが作品全体の10分の1程度に過ぎないことを考えると破格の待遇と言えよう。

試写で最初にこれを見たとき、「感激で胸がつまった」と石川は告白する。

「オープニング・クレジットのことは事前に聞いていなかったし、こちらからも頼まなかった。だから、うれしくて…。タランティーノが出来上がったものを気に入って、きちんと評価してくれた証拠だからね」

タランティーノ監督が用意した、もう一つのサプライズ

実は、タランティーノ監督はもう一つのサプライズを用意していた。石川を華々しい記者会見の席に呼ぶことである。

「『君も大事なスタッフなんだから、一緒に壇上に上がってくれ』って言われたんだよ。そのときも、帰りの電車の中で涙をこらえるのに必死でしたね」

監督や主演俳優と一緒に壇上に上がること。それはつまり、単なる下請け、完全な黒子として扱われることが多かった日本のアニメ制作会社が、ようやくハリウッドの重要な“パートナー”として認められたことを意味する。

「“クールな日本アニメ”が世界を席捲」などとメディアは騒ぎ立てるが、日本の制作会社が表舞台に立てるようになったのは、ごく最近のことなのだ。

「プロダクションI.G」を引っ張ってきた石川にとって、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。いやむしろ、自ら好んで崖っぷちを突っ走ってきたと言ってもいい。しかも全速力で。

目がくらむほどのストロボの光を浴びながら、彼の胸中には言い尽くせぬほどの熱い思いがこみ上げていたに違いない。

下請け体質から脱却するための独自の方法論

“下請け体質からの脱却”は、経営者としての石川が一貫して追い求めてきたテーマでもある。

国内には約440社のアニメ制作会社がある。だが、経営状態は総じて厳しく、“ジャパニメーション”が世界から注目を集めるようになった現在でも、株式を公開しているのは「東映アニメーション」、「GDH」など数社に過ぎない。

そんな中、石川は孤軍奮闘。狭いマンションの一室からスタートした小さなプロダクションを、従業員210余人を抱える有望企業に育ててきた。

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