働く意思 任せる経営
何故、ホームレスになるのか
バブル崩壊後の日本は、失業・倒産に見舞われました。ワーキング・プアと呼ばれる階層が固定化する傾向にあり、格差がさらに拡大していっています。高度経済成長が終わりを告げて「安定成長路線」と政治が言っている時にも職にありつけない人たちはいました。家族を捨て故郷を捨て、人はどうして路上で生活しなければならないのか? ホームレスの皆さんと話をする中で私は大きな社会の矛盾を感じました。
人は寄り添う人がいなければとても寂しい人生を送らなければならない。「浮浪者はやる気がないのだから放っておけばいい」「皆自分のせいだから社会が面倒を見る必要はない」。こんな考え方もあります。しかし、一方で「人を温かく包み込む社会でなければならない」という考え方もあります。
ホームレスの人たちとの経験を松下塾長に話すうちに私たちはどのような社会を目指せばいいのかを自問自答しました。
「それは、働く意思の薄弱やな」
松下塾長はそう答えました。
そして、感慨深げに私の報告に耳を傾けて、「それはなかなか立派なことや。塾生の研修は皆そうでなければいかんな。世の中のことを頭で考えるのではなくて、自分自身がその中に飛び込み、体で勉強するというのでないと本物にならない」。
「昨年(昭和59年)神奈川県で中学生が浮浪者を襲撃する事件があった。物が豊かになっても心が貧しくすさんでくると、人間を人間と思わんようになる典型的な事件と言えるな。今の世の中は、人の袂(たもと)を引っ張ってでもはい上がろうという人が多いのやから、自ら袂を離して落ちていく人間の面倒は見切れんわけや。しかし、浮浪者がたくさん出てくるというのも、またそれらの人たちを虫けらのように扱う風潮も政治のしからしむるところである。そういう人を包み込むような社会を作っていくことも、政治の大きな仕事である。君たちにはぜひそのような政治家を目指してほしい」。
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