住基ネット不参加の決断〜政治家と行政官のはざま
(山田 宏=杉並区長)
2002年にスタートした住基ネットには、杉並区はいまだ参加していません。現在不参加の自治体は、杉並区以外では、東京都国立市と福島県矢祭町だけです。
住基ネットは、私が国会議員時代から関心を持ってきたテーマです。この分野に最も強い問題意識を持つ河村たかし議員をはじめとする何人かで、「このシステムは問題が多い」と議論していました。このシステムに危惧を抱く「保守系の政治家」は、「自由」が持つ計り知れない価値を大切にしようという自由主義者であり、官僚や役所の余計なおせっかい(善意であっても)を嫌う独立自尊の人が多いと思います。
杉並区が住基ネット問題に取り組むきっかけとなったのは、2000年6月の区議会である自民党議員が発した質問でした。住基ネットが稼働する2002年8月の約2年前のことです。住基ネットに対する考え方を問われた私は、「住基ネットに対しては、大きな危惧を抱いている」と「政治家」としての持論を展開しました。それ以後私は、区長として、「政治家」と「行政官」の2つの顔を持ちながら、住基ネットに向き合うこととなりました。
「政治家」である私が抱いた3つの危惧
私が選挙で選ばれた「政治家」として住基ネットを危惧する理由は3つあります。第1に費用対効果が明確ではないこと。第2に、こうした強制加入の制度は、年金や保険制度のようにいずれ不効率とサービスの劣化を招き、制度が崩壊するに違いないこと。そして第3に、国民共通番号は、個人情報の国家への集積をもたらし、国のおせっかいな政策を増長させ、国民の自立心を萎えさせてしまうだろうことです。
つまり私は、住基ネットが「強制参加」のITシステムであることを問題視したのです。健全なIT社会をもたらすためには、参加は自由でなければならない。
しかし区長という立場は、法律を執行する「行政官」です。いくら住基ネットに反対だと言っても、「行政官」が住基法に違反する行為はとれません。そこで私は、「政治家」として抱いた危惧を、「行政官」としてどこまで解決するか、に取り組んできました。
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