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こうした背景があったため、太田氏の寄稿は、筆者にとって非常に新鮮であった。ひょっとすると携帯電話をお使いの読者の方々にとっては既知のことかもしれないが、あえてご紹介しようと思った次第である。

太田氏によると、今日でも「日本の携帯電話は、機能面や品質で世界最高水準である」。確かに、あの小ささで動画の撮影や送信までできると聞くと、大変な技術だと思う。にもかかわらず、世界市場で日本メーカーの存在感がないのはなぜか。太田氏の結論は「高機能で高品質の優れた商品を作りさえすれば、世界中で売れるという思い込み」が原因という。一方、ノキアは「欧米のユーザーにとって、値頃感のある価格帯の製品を開発し、的確に市場に投入した」。

全体のデザイン力に課題

数日前、知り合いのコンサルタントが打ち合わせに来られたので、停滞産業復興計画特集の掲載誌を見せ、携帯電話の話をした。彼は「日本メーカーの製品は、全体のデザインがバランスを欠いている。何か歪んだ印象を受ける」と言った。ここで言うデザインとは意匠だけを意味しない。使いやすさ、機能、意匠をすべて含めた全体の調和のことである。「結局、利用者が本当に望んでいるものが何か、日本メーカーは把握できていないのではないか」と手厳しい批判を述べる彼は、ノキア製携帯電話を使っている。

高品質・高機能・低コストの製品を作っても、それだけでは売れなくなっている事実は、いくつかの産業を見ていると分かる。もちろん、日本メーカーの品質と機能へのこだわりと、工場におけるコストダウンの努力は大変なものだ。ただ、それだけでは世界市場で勝てなくなっている。

停滞産業復興計画特集において取り上げた産業は、携帯電話のほか、IT、時計、家庭用ゲーム、半導体、アパレルである。いずれの産業においても問題点は似通っている。「日本国内の競争に終始し、世界を見ていない」、「属人的な技術に固執し、汎用化ができなかった」などだ。あまりにも同じであったので、それを題材にしたコラムを技術者向けサイトTech-On!に書いた。ご興味のある方はこちらもご覧ください。

本記事は日経ビジネスEXPRESSでも公開しています。

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谷島 宣之

経営とITサイト編集長。日経コンピュータ・ITpro・日経ビジネスオンライン編集委員。1985年に記者となって以来、情報システム関連のテーマを取材し続けている。特に、システム開発プロジェクトについては、100件以上の実例を取材し、報道してきた。かかわった媒体は「日経コンピュータ」「日経ウオッチャーIBM版」「日経ビズテック」「ITpro」「日経ビジネス」など。「経営者とIT担当者の間にある溝」に最大の関心を寄せる。

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