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新システムづくりは並大抵のことではない

もちろん民営化の方針が事実上決まった以上、いつかは民営化対応の情報システムを用意しなければならない。生田正治日本郵政公社総裁は昨年、情報システムの対応が間に合わない理由として「どのようなビジネスモデルでどのような経営方針でビジネスを進めていくかという経営陣の意思決定があって、初めてシステム設計に着手できる」と述べていた(「首相が情報システムに関して指示、郵政民営化論議の歴史的意義」を参照)。

これは正論である。つまり新経営陣の意図を入れて新しいビジネスモデルと情報システムを用意すべきである、と生田総裁は主張している。ただし、実はこれも一筋縄ではいかない。

2007年10月の民営化は、現行のシステムを手直しして乗り切ることになる。これは暫定措置だから民営化された郵政関連会社は「新経営陣の意図を入れて新しいビジネスモデルと情報システムを用意」しようとする。しかし、民営化間もない段階で、新経営陣は意図を表明できるのだろうか。「新規サービスに進出」と言った瞬間、銀行界や運輸業界から猛反発が出るだろう。

しかも民営化の後に、従来のように、数年おきに巨費を投じて大規模システムを作り直すというやり方を踏襲できるだろうか。郵政公社のシステム投資のほとんどを占める郵貯のシステムに関する投資に至っては、自力で賄えない可能性すらある。

ならば買ってしまう、という手も?

新ビジネスモデルづくりの面でも、開発パワーと予算の面でも、新システムを準備するのは並大抵のことではない。話を少し戻すが、こういう現実があるゆえに、多少民営化の時期をずらしたところで、きちんとした民営化対応システムなど用意できないのである。筆者が2007年4月に民営化してもよかったのではないかと言った理由はここにある。

それでは民営化された「郵便貯金銀行」はシステムをどう用意すればいいのか。最も現実的なアイデアは、既に動いている民間銀行のシステムを買ってくることである。一から作るより安いし、長年使ってきたシステムだから、関係者が病的に恐れているシステム障害の可能性も少ない。

幸いにも、都市銀行の経営統合が続き、いくつかの銀行システムが廃棄されている。この中から選べばよい。まだ現役のUFJ銀行のシステム、先ごろその役目を終えた旧・富士銀行のシステムなどが候補になる。理想は、リテール業務に強いUFJ銀行のシステムだが、東京三菱銀行が郵貯に塩を送ることを認めるかどうかがカギとなろう。

なお、既存のシステムを買ってきた場合、郵便貯金銀行の中で使う用語、事務ルール、帳票などはすべて、既存システムを作った銀行のものを踏襲する必要がある。「郵便貯金銀行ならではの考えを盛り込む」などと言って、買ってきたシステムの修正を始めたりすると、カネも時間もかかりすぎる。

本記事は日経ビジネスEXPRESSでも公開しています。

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谷島 宣之

経営とITサイト編集長。日経コンピュータ・ITpro・日経ビジネスオンライン編集委員。1985年に記者となって以来、情報システム関連のテーマを取材し続けている。特に、システム開発プロジェクトについては、100件以上の実例を取材し、報道してきた。かかわった媒体は「日経コンピュータ」「日経ウオッチャーIBM版」「日経ビズテック」「ITpro」「日経ビジネス」など。「経営者とIT担当者の間にある溝」に最大の関心を寄せる。

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