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新製品を作っていた間、IBMはシステム/36やシステム/38を強化しなかったので、IBMの市場シェアは低下し続けた。するとIBMはシステム/36だけを残し、システム/38の後継機は開発しないという方針の検討を始めた。IBMは結局、システム/38の革新的設計思想と高い顧客満足度を評価し、土壇場でシステム/38の方を生き残らせることに決めた。

こうして1988年6月21日に発表したのが、システム/38の後継にして、iSeriesの前身であるAS/400である。AS/400は世界的にヒットした。

それでも1990年代に入ってパソコンとUNIXサーバーを組み合わせたシステム形態が流行すると、AS/400の成長率は発売当時ほどではなくなってきた。ソルティス博士は自著の中で「1993年には、マスコミとコンサルタントたちの間で、AS/400のイメージは最低であり、多くはAS/400の滅亡を予言していた」と述べている。

しかしIBMは、AS/400のイメージを一新する手を打った。その一つが、1995年に、AS/400で使っているCPUを「POWER」と呼ぶシリーズに切り替えたことである。POWERはIBMが、UNIXサーバー用に開発してきたCPUであった。これを採用することで「AS/400もUNIXサーバー同様の性能を出せる」というイメージを打ち出せた。

通常、CPUを変更してしまうと、顧客がこれまで使ってきたソフトウエア資産はそのままでは利用できなくなり、ソフトウエアの書き換えが必要になる。ところが、ここでAS/400の設計思想が真価を発揮し、既存のソフトウエアに影響を与えることなく、CPUを切り替えることができた。さらにUNIXの上で開発されたソフトウエアをAS/ 400に搭載しやすくする工夫もこらし、AS/400へ、UNIXサーバーで開発されたソフトウエアを移行しやすくした。こうしてiSeries(AS/400)は2度目の危機を乗り切ったのである。

◇  ◇  ◇

このように設計思想から開発の歴史まで、iSeriesはとにかくユニークな製品である。これだけ顧客から評価される設計思想とはどのようなものか。また、実際の製品開発とサポートをどんな体制で行っているのか。「顧客満足度ナンバーワン商品の作り方」を数回に分けて探ってみたい。

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谷島 宣之

経営とITサイト編集長。日経コンピュータ・ITpro・日経ビジネスオンライン編集委員。1985年に記者となって以来、情報システム関連のテーマを取材し続けている。特に、システム開発プロジェクトについては、100件以上の実例を取材し、報道してきた。かかわった媒体は「日経コンピュータ」「日経ウオッチャーIBM版」「日経ビズテック」「ITpro」「日経ビジネス」など。「経営者とIT担当者の間にある溝」に最大の関心を寄せる。

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