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厚生労働省の人口動態統計によると、団塊の世代(1947年〜49年生まれ)が結婚のピークを迎えた60年代後半〜70年代前半、婚姻数は年間100万件の大台を超えたが、78年には70万台にずどんと落ち込んだ。T&Gが新規参入した直後の2000年には、「ミレニアム婚」を主な理由として79万件まで戻したものの、2004年は72万件と前年より約2万件も少なく、3年連続して減少した。団塊ジュニア世代(71年〜74年生まれ)の結婚が一巡してしまえば、60万台への突入も時間の問題。婚姻数は長期低落傾向にあると断言していい。

そうした社会現象が明らかになっているにもかかわらず、野尻社長はどんな理由でブライダル分野に新規参入したのだろうか? 東京・港区南青山にあるT&G本社に野尻社長を訪ねて質問をぶつけたところ、こんな答えが返ってきた。

「ブライダルは市場規模が2兆円もあるが、大企業は参入していないし、専業でやっている企業も少ない。しかも、ブライダルは業態が飲食店にかなり近く、チャンスがすぐそこにある業界だ。大手が参入してこなかった理由は、近い将来市場が縮小すると予測しているから。でも、結婚式がなくなることは絶対にない」

野尻社長が続ける。

「で、ブライダル分野を最終的に選んだのは、私にもビジネスチャンスがあると思ったから。起業に当たっては、まず、結婚適齢期の人たちに新たなニーズがあることを確認できた。ブライダル市場が小さくなって、競争が激しくなっても、優位性を保ちながらお客さんが喜ぶ商品をつくり上げれば必ず勝てる! 自分にはチャンスがある! という自信があった」

鉄人化計画の日野社長とT&Gの野尻社長が覆す、「会社を興すなら成長市場で」という一般常識。縮小市場であっても大手による寡占化が進んでいなければ、そして優位性を持ち込むことさえできれば、新規参入の勝算はある。

「あえて縮小市場に進出する」という、この逆転の発想は、もちろん起業家だけのものではない。大企業から中小企業まで、新しい事業を開発する部署のビジネスパーソンにも大いに参考になるはずだ。というのも、新規事業は起業とよく似て、ギャンブル的な要素が強いからだ。

あなたの会社の新規事業はうまくいっているだろうか? もし失敗続きだったら、進出分野選択に関する考え方と手法を総点検することをオススメする

永井 弘(ながい・ひろし)

日経リゾート副編集長、日経ギフト編集長、日経イベント編集長などを経て、現在、編集委員室編集委員。専門分野はホテル&リゾート、イベント。著書に「戦後観光開発史」(第24回「交通図書賞」受賞)、「東京年輪論」、「株式公開でスピードサクセス!-上場・成功社長が実践した“超速”テクニック39」など。

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