SIビジネスの“3大病”を早急に治せ
(田中 克己=編集委員室主任編集委員)
「SIビジネスには契約の曖昧性、仕様の変動性、システムの膨張性という3大病がある」。日立システム&サービス元社長の名内泰蔵氏は3大病を治療しない限り、SI(システムインテグレーション)ビジネスに明日はないと指摘する。
1961年に日立製作所に入社し、JR(旧国鉄)の座席予約システム「MARS(マルス)」など大規模プロジェクトを数多く経験した名内氏は、2つの調査結果を見て衝撃を受けた。
1つは日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の2003年調査で、システム構築におけるITベンダーへの満足度が25%だったこと。もう1つは、日経コンピュータ(2003年11月17日号)の調査。同じようにシステム構築で成功したとのユーザー企業の回答が26.7%しかなかったこと。「これはおかしいと思った。ユーザー側はこの会社なら良いと思って発注したはずなのに、なぜ経営者らの25%しか満足していないのだろう」(名内氏)。
最大の問題は、ユーザー企業とITベンダーの間に曖昧性という“壁”が存在することだという。養老孟司氏の著書「バカの壁」とは違うが、名内氏はそれを“馬鹿の壁”と呼ぶ。「ユーザー企業は馬のつもりで発注したが、ITベンダーは鹿だと思う。しかも鹿に『首を長くしてくれ』『斑点をつけてくれ』と要求を次々に付け加える。結局、出来上がったのは麒麟の姿だった」(名内氏)。
こんなプロジェクトは、次々に仕様が変更・追加され、その結果としてシステム規模が膨れ上がるのは当然に成り行きだろう。「麒麟の文字を見て欲しい。元の鹿の姿が2倍になっている」(名内氏)。なぜ、こうした事態になるのか。すべてはシステムのRFP(提案依頼書)をきちんと書けないことに起因している。2つの調査結果によると、RFPを書いているユーザー企業は全体の5分の1程度と少ない。多くのユーザー企業はITベンダーなどにRFP作成を依存しているのが実態なのである。
この数字はその後の調査で少しずつ増えているものの、ユーザー企業は不十分なRFPであることを知りながら、ITベンダーにシステム構築を発注している。このことが「ユーザーの不満」と「ITベンダーの赤字」という不幸を生んでいる。それでもユーザー企業が「ITベンダーは無理を聞いてくれた」「喜んでくれた」「価値を認めてくれた」なら、ITベンダーは少し救われるかもしれないが、現実はそうでもない。
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