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「ガーデンシティ」から「コンパクトシティ」へ

話を大井第一生命館ビルに戻そう。大井第一生命館ビルの敷地は約60万平方メートル。社屋や社員食堂のほかに、社宅・寮・各種スポーツ施設などがあり、住宅と会社が接近していて通勤に時間がかからない。余暇の時間は増え、本を読んだりスポーツをしたり、絵に描いたような理想的な生活が送れるだろう。まさに「ガーデンシティ」の考え方にもとづくもので、大井第一生命館ビルは純粋に理想を追求したのだ。

この構想を発案・実行したのが、田園都市の理想を追った矢野恒太の息子・一郎だった。この移転は画期的な決断だったに違いない。しかし、再び理想は挫折したかのようである。

だが、田園都市の理想は、少子高齢化時代のいま、徒歩圏内で病院や市役所に行けるエリアに集約する「コンパクトシティ」という都市モデルにも通じている。大井町に残された近代都市の遺産をなんとか残せないものだろうか。

猪瀬 直樹(いのせ・なおき)

作家。1946年、長野県生まれ。

1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。政府税制調査会委員、東京大学客員教授、東京工業大学特任教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。東京都副知事。最新刊に『東京からはじめよう』(ダイヤモンド社)がある。

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