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用途が自由な地方交付金の“上納”を“お願い”

都道府県の歳入は「地方税の税収」「補助金」「地方交付税」で成りたっている。補助金は使用目的がしっかりと決まっている、ヒモ付きのお金だ。たいして交付税は、都道府県の裁量で自由につかうことができる。いわば国から地方への“仕送り”のようなものだ。その額を算出する“変数”に観光振興が加わったからといって、観光振興に支出する義務はない。

しかし社団法人日本観光協会は、その変数のなかに、昔の料飲税の“しっぽ”のようなものがあることをもって、ずっともらっていた金額なのだから、その一部を拠出せよといっているのだ。『全国広域観光振興事業拠出金制度の経緯等について』によると、「商工行政費」のなかの「観光及び物産振興費」がその“しっぽ”だ。「強制ではなくお願い」というタテマエだが、上納金の催促に違いない。

日本観光協会は国土交通省の天下り団体で、会長は元運輸事務次官の中村徹氏である。理事長は総務省、5人の常勤理事のうち国土交通省(旧運輸省)と総務省(旧自治省)からの天下りが2人ずつポストを分け合っている。

国交省の態度に、地方分権委員会の丹羽宇一郎会長も怒った

分権委員会では僕はもう一度問うた。

「観光協会を縮小するとか廃止するとか。そういう方向で検討します、ということだけでも言ってくださいよ」

「国の機関ではございませんので、私どもがどうこうするという立場ではない」と西阪大臣審議官は答えたが、丹羽宇一郎委員長(伊藤忠会長)が言葉をさえぎった。

「それは表向き。OBの人がたくさん行っているんだからね。国交省がまったく知らないということはあり得ないんだから」

しかし西阪大臣官房審議官も繰り返す。

「機関としては公益法人ということでございまして……」

国交省の観光部門は、10月に国交省の外庁として発足する「観光庁」へ業務を移転する予定になっている。日本が観光立国を目指し、観光振興に本腰を入れる姿勢を内外にアピールするのが目的だが、「観光庁長官」というポストをつくりたいためと思われても仕方がない。

別に「観光庁」でなくてもアピールはできるだろう。東京は、自力でしっかりやっている。

地方自治体が行政コスト削減をして得たお金をつぎこむのは観光行政だ。これこそ地方の仕事であって、国が公益法人を使って地方をあごで使うような仕組みはもはや許されない。

猪瀬 直樹(いのせ・なおき)

作家。1946年、長野県生まれ。

1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。政府税制調査会委員、東京大学客員教授、東京工業大学特任教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。東京都副知事。最新刊に『東京からはじめよう』(ダイヤモンド社)がある。

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