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青島知事には、貴重な文化財を保護してほしかった

1995年3月に鈴木都知事が引退。旧知事公館の建て替えは後任の青島都知事に委ねられた。

1995年9月。青島都知事は新知事公館についての検討結果の報告を受ける。残念なことに、青島知事はこのとき、建て替え計計画を承認した。昭和初期に建てられた瀟洒(しょうしゃ)な建物を文化財として後世に残す、という発想はなかったのだろうか。

コストの面でも、無駄遣いをする必要はなかった。見取り図をみせられていたはずだ。土台をしっかりと直して、梁を補強する。12億円もかけずとも、安く再生できただろうに。

都の職員にも猛省を促したい。「古くなったから壊す」とは血も涙もない。文化財にたいする愛がないのだ。役人とは恐ろしいものだと思う。

古い住宅はいまや地域の宝だ。古民家再生のノウハウはいくらでもあるのに、残念な話だ。歴史的な価値を残した文化的な知事公館だったら、後任の石原都知事も住む気になっていたかもしれない。青島都知事は都市博を中止した。どうせなら旧知事公館の建て替えも中止してほしかった。

更地にして売却して、都民のための政策に生かす

新知事公館が完成したのは1997年7月。9月に青島都知事が入居し、任期が切れる1999年4月まで生活した。その後は空き家状態。都知事公館としては1年8カ月しか機能しなかった。

そのまま空き家状態をつづけていてもしかたがない。一時期は民間に貸し出しレストランとして利用したりもしていた。また、外資系企業の役員向けの高級賃貸住宅や、建て替え中の大使館の代替施設として貸し出す案もあった。外資系企業の役員向けに貸し出せば月100万円以上の家賃はとれるだろう。

しかし、高級物件としての魅力に乏しく、いずれも上手くいかなかった。主が住む邸宅部だけで、メイド部屋もない。民間の目線でみたら、使い勝手が悪いことこのうえない。その後、都民などを対象とした研修・交流の会場として利用するのだが、これも失敗に終わる。

こうなると、もう売却するしかない。土地は競売にかければ50億円とか100億円とかで落札されるだろう。知事公館は税金で建てたものだ。すこしでも高く売り、都政に活かさねばなるまい。

資産売却は小さい政府への改革のひとつの選択肢だ。それは無駄なハコモノを売却するだけではない。どうしてそんなものをつくってしまったのか、失敗の検証がなければ改革の意味がない。

猪瀬 直樹(いのせ・なおき)

作家。1946年、長野県生まれ。

1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。政府税制調査会委員、東京大学客員教授、東京工業大学特任教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。東京都副知事。最新刊に『東京からはじめよう』(ダイヤモンド社)がある。

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