東京・松涛の知事公館の“失敗”を検証する
東京都は、渋谷区松涛にある知事公館を売却することにした。小さな政府を目指すうえで、国・地方ともに不要な資産の売却は進めていかなければならない。そのひとつが、都道府県知事の知事公館ではないか。
現在、知事が知事公館に入居しているのは32道府県。入居していないのは東京都も含めて15都府県だ。石原慎太郎・都知事は知事公館に住んでいない。宮城県、栃木県、香川県は知事公館を売却。長野県、山口県、徳島県は解体している。兵庫県はそもそも所有をしていない。
僕は原理主義的に知事公館を不要だとは思わない。大地震の際の初動対応に備えた防災機能や、国内外の要人を迎える迎賓機能などを果たすこともありうる。だが、東京都知事公館はまさに帯に短し襷に長し、の困ったハコモノなのである。
主のいない知事公館はいま、職員の研修施設などとして利用されている。2006年度の利用は20回に満たないが、設備保守費、光熱費などで年間約550万円もコストがかかる。有効に機能しているとは言い難い。どうしてこんなことになってしまったのか。
思想がない……一見豪華だが、使い勝手が悪く冷たい感じがする
失敗を検証するために、見に行ってきた。東京でも屈指の高級住宅街に、明らかに違和感のある建物が現れた。約670坪の敷地に鉄筋コンクリートの2階建て。1997年に総工費約12億円をかけて建てた。一目みて、なぜ12億円もかけてこんなひどいものをつくったのか、と愕然とした。センスがない。石原都知事も入居しないわけだ。
玄関を入ると右手に研修室がある。黒板や演壇があり、イスがずらりと並んでいる。左手には事務室と配膳室、会議室、講師控室などがあるだけ。知事の居住スペースは2階にある。隣接した執務室や会議室、防災連絡室などに場所をとられ、居住空間はフロアの半分である。プライバシーも確保できないし、公邸として広いわけでもない。
こうした設計が、公益性を充実させた結果なら仕方ないが、外国の大使や要人が訪れたときにパーティーを催すこともできない。大理石の床は、一見したところ豪勢なのだが、天井が低く動線もよくない。中途半端なのだ。建物に関する思想が感じられず、底冷えしてくるような感じがする。
担当を聞いて、合点がいった。設計したのは都庁営繕部の職員だった。都営住宅を設計している部署である。安藤忠雄氏や隈研吾氏などの建築家ならば、こうはなっていなかっただろう。石原都知事も入居しなかったが、僕だってお金をもらっても住みたくない。
北朝鮮の高官もこのようなセンスがない宿舎に住んでいるのではないだろうかと想像する。
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