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衆参のねじれ状態は内戦と同じ、一刻も早く和睦を

いっぽう、参議院選挙で自民党が大敗。参議院は野党が過半数となり、与党が3分の2を占める衆議院とで、ねじれ国会になった。そして、自民と民主のバラまき合戦が始まった(関連記事)。これはいわば“内戦”状態だ。内戦で交わされる論争は、いまのところ足の引っ張りあいだ。福田政権にはメッセージがないし、民主党のメッセージは、財源の手当てがなく実行不能だ。内戦は外国勢力からみれば隙だらけの状態。歴史上、ある国が外国の植民地になるのは内戦のどさくさである。

明治維新のときは、内戦にいたる寸前で止めることができた。しかし今回は、法案が全く通らない状態がつづいている。これは内戦のままで統一国家の見通しが立たないということだ。それを解消できる可能性があったのが「大連立」だった。一刻も早く内戦をやめて、和睦を結ぶ必要から生まれた案だ。福田康夫首相、小沢一郎民主党代表の双方がそう思ったはずだ。

僕は大連立もひとつの選択肢だったのではないかと思う。政策が何も決まらないのだから。年金問題も、自民と民主の党派で政争の道具にされるべきではない。民主党には、もともと自民党出身者が少なくない。政策も大きくは違わない。むしろ大連立して個人の力が試されるようにしたほうがいい。大事なのは責任を持ってやってもらうことだ。

だが“和睦”は否定されやすい。和平協定を結ぼうとする人は、日和見主義とみられる。

「大連立」が実現せず、政治が何も決定できない。自民と民主の双方が共に疲弊する状態がつづいている。この先6年間、政党間の小さな合従連衡がつづく可能性が出てきた。連立が解消され、また違う連立が生まれる。権力闘争ばかりが6年間もつづいたら、新たに“失われた6年”が生まれるだろう。そして官僚機構だけが、ひとり生き残るかたちになっている。そういう状態でいま、新年を迎えているのだ。

個人がそれぞれ世界と対峙できるようになる改革を

であるにもかかわらず、いまは「このままだとダメになる」だから「金よこせ」のバラまきの合唱になっている。第19回で取りあげた「道路特定財源」の暫定税率廃止に関する議論は、国民の「金よこせ」に迎合するポピュリズムだ。

暫定税率を廃止すれば、ガソリンの値段はいまよりも約25円下がる。国民はみんな飛びつく。しかし、5兆7000億円ある「道路特定財源」は約3兆円に減ってしまう。果たしてそれでいいのか。僕は「道路建設推進派」ではない。だが、ほんとうに必要な道路はある。3兆円では、それさえつくれなくなってしまうだろう。とにかくガソリンが安くなればいい国民と、それに乗る政治。日本人は風格を失っているのではないかと思う。

「ダメにならない」ためには、個人がそれぞれ世界と対峙し、自分たちで仕事を生み出せるようにするための改革が必要だ。政府にすがり「何かよこせ」をつづけていたら、とてもではないが「フラット化する世界」では耐えていけない。

「日本はこれからダメになる」と嘆いていても仕方がない。ダメにならないための改革、「フラット化する世界」を乗り越えるための改革をつづけるしかない。

猪瀬 直樹(いのせ・なおき)

作家。1946年、長野県生まれ。

1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。政府税制調査会委員、東京大学客員教授、東京工業大学特任教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。東京都副知事。最新刊に『東京からはじめよう』(ダイヤモンド社)がある。

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