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11月14日付けの読売新聞に僕はこう述べた。

「1万4000kmは国交省の言い値で、必要な道路を精査すればもっと減るはずだ。暫定税率を維持するための苦肉の策だろうが、個別路線の費用対効果を開示するのが大前提だ」

今回、68兆円という数字が出てきたのは、来年の3月に、道路特定財源の暫定税率が見直しの時期を迎えることが関係している。「もしかすると暫定税率が廃止になるかもしれない」という焦りから68兆円という数字がでてきたのだろう。暫定税率そのものが危機になってきたので、道路を欲しがる地方に意見を聞き、68兆円という数字をつくった。

今までの議論は一般財源化に関する攻防だったのだが、今度は暫定税率の攻防も加わった。

極論を排して、地道な改革に戻ることが必要

この二つの悪しき道……民主党は「タダだ、タダだ」と言いまくり、国交省は「68兆円が必要だ」と強調する……が、ことの本質を見えなくさせている。勉強不足のメディアは右往左往しながら、それぞれの主張にまんまと載せられているし、テレビなどはきちんとアタマを整理できず、ただ騒いでいるだけだ。

道路公団民営化委員会で、僕は一つひとつの高速道路について、さまざまな数字を出した。その数字をもとに、「そもそも必要な路線なのか、必要でないのか」、「3車線を2車線にするか、2車線を1車線にするか」などを判断した。こうした作業を積み重ね、高速道路にかかるはずだった20兆円を10兆円にまで圧縮することを可能にした。しかし、その当時の努力がすっかり忘れ去られ、ばらまきは野放図に復活しかけている。

いま、「タダにしろ」とか「道路特定財源は道路で使いきれ」などとポピュリズムの変な風が吹いている。繰り返すが、日本国は800兆円の借金大国であり、借金はいまも増えつづけている。抜本的な税財政改革の前に、ほんとうに無駄はないか、国民の負担はどうあるべきか。地道な改革を語らなくてはならない。

猪瀬 直樹(いのせ・なおき)

作家。1946年、長野県生まれ。

1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。政府税制調査会委員、東京大学客員教授、東京工業大学特任教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。東京都副知事。最新刊に『東京からはじめよう』(ダイヤモンド社)がある。

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