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戦後の復興期は、キャッチアップの経済だった。国が深く地方自治に関与して画一的な基準をもとに一定水準の行政サービスを全国に行きわたらせなければいけない。中央集権型の仕組みは有効に機能した。ところが、高度経済成長期を過ぎた日本は、世界でもっとも急激な少子高齢化・人口減少に直面する。過疎の村は人口流出と少子化のスパイラルのもとで「限界集落」という問題を抱えるようになった。一方で、東京都や名古屋市などの大都市はグローバルな都市間競争時代に突入する。金融市場や空港・港湾による貿易をつうじて成長をつづけるアジア諸都市と競り合っていかなければ、日本国は埋没してしまう。

都市も農村も、地域独自の個性に根ざした行政がカギとなる。中央省庁による全国一律の基準をつづけていては、地域固有の魅力を持つサービスや、地域の工夫による柔軟なサービスが提供できない。これが地方分権改革の目的だ。

地方分権は、受益と負担の関係を整理して進める

このような考え方の基本として「中間的な取りまとめ」の前文にこう記した。

「我々は、日本国の国民であると同時に地域コミュニティに所属する住民であり、どの地域に住んでいようが、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が保障されている。

納税者である国民は、主として外交・安全保障、通貨・金融政策など中央政府を構成することで得られる受益と、ふだんの生活にかかわる身近な地方政府からの受益と、双方のサービスを提供されている。

中央政府を機能させる財源は国税による。同様に地方政府の財源はその地域の住民による地方税を基本とすることが望ましい。

だが日本国は長い間、中央政府の官僚機構によって地方の行財政が硬直的に運営されてきたので、地域における受益と負担の関係があいまいにされ、納税者の役割が軽視されてきた」

中央省庁が権限を移譲すると同時に、受益と負担の関係を考えなければ地方分権はできない。都道府県や市町村が行うべき施策に対して、国の補助金が投入されていくうちに、受益と負担の対応関係が明確ではなくなっているからだ。受益と負担の関係とは、納税者がいくら税を払い、それによって、どのような種類の行政サービスがどれだけ受けられるかということ。国税から地方税に税源を移譲していくなかで、地方の行政サービス(受益)と地方税の納税(負担)とができるだけ対応する関係に近づけていくことが望ましい。

地方分権を推し進め、受益と負担の関係を整理すれば、地域によっては、「財源が限られているので一部のサービスを切り下げる」ケースも出てくるだろう。逆に、「サービスが手厚くなる」地域もあるだろう。手厚くなる分、税の負担が増える場合もあるかもしれない。

猪瀬 直樹(いのせ・なおき)

作家。1946年、長野県生まれ。

1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。政府税制調査会委員、東京大学客員教授、東京工業大学特任教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。東京都副知事。最新刊に『東京からはじめよう』(ダイヤモンド社)がある。

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